一日目、終了。 一日目も私の予想を遥かに超えて楽しかった。……じゃなくて騒々しかった。 沖田くんと神楽ちゃんは仲良くやってけてるかなぁ、って余計なお世話だけど気になっちゃう。
「おい、」 「ぅわっ!」
頭の上に暖かい缶コーヒーが置かれた。 声色で誰だかはすぐに分かったけど、何も言わなかった。 みんなは今頃部屋で枕投げでもやってんだろう。 私は死ぬのは嫌だったから部屋からこっそり抜け出して、旅館の足湯に浸かっていた。
「なにしてんだ、こんなところで」 「それ、高杉もだから。これ、ありがと」
缶コーヒーのプルタブを開けてごくごくと飲む。 暖かいところで暖かいものを飲むってのも中々悪くない。 高杉は私の横に腰を落とした。何を考えてるのかさっぱり分かんない奴だな、こいつ。
「…お前、最近沖田と仲いいな」 「別に好きで仲良くしてるワケじゃないから。怖いもん、沖田くん。高杉くらい」
どうしてこの学校にはドSしかいないのかしら! 先生もドSだし、高杉もそうだろうね。沖田くんなんかドSを越したドSでしょ?
「ムカつくよな、沖田」 「いや、ムカつきはしないけど…。沖田くんの何がムカつくのさ」 「なんでもねェよ」 「なんだよ、教えろよ!首絞めるぞ!?」
そう言ったけど、結局返り討ちにあうのは私。 私が結局やられるんです、はい。
「ギブギブゥッ!苦しい、苦しい!すいません、もう二度とそんな事いいませんからァ!」
力が抜けた腕。それで苦しくなくなったのはいいけど、高杉は私の後ろから離れようとしてくれない。 ちょっ…高杉すゎん!?ナニコレ、ほんっとにナニコレ! すっごい顔熱いんですけどッ、高杉さんンンンン!離れてェェェェ!離れてくれないと私爆発するから、熱上昇中なんだってばァ!
「ンだよ、朝っから沖田と仲良くしやがって…、死ね」 「え、ちょ…死ねって……」 「お前は俺と沖田どっちが好きなんだよ」 「は!?んなこといきなり…っ」 「答えろ、バカ」
バカとか死ねとか…いくらなんでも酷すぎるでしょ、ねえ。 流石の私も結構きてるんですけど、泣きそうなんですけど!
「沖田くんって言ったらどうする?」 「沖田殺す」 「……うん、ごめん。沖田くんじゃなくて高杉だよ。それは、高杉に殺人犯してほしくないからとかじゃなくて、…本当だから。……そろそろ本当に爆発しそうなんですけど」
あーあ、私ってばなんて恥ずかしいこと言ってんだろ。本当、死ねる。 今迄こんなことなかったのに……畜生、高杉め。いつか呪ってやるからな。
「じゃあ、なんで沖田とあんな仲いいんだよ。神楽が嫉妬してたぜ?」 「神楽ちゃんが…?なんで」 「お前が答えたら教える」 「アンタが答えたら教える」 「じゃあ、教えねェ」 「えー…」
これ、もしも。本当にもしもだけど、脈有りだったら?私としてはすっごい嬉しい。 だから聞きたいけど、高杉に「沖田くんが神楽ちゃんのこと好きだから〜」なんて言ったら私が沖田くんに、確実に、殺される…ッ!!
「それは言えないんです、お願いだから教えてくれやァァァァ!」 「嫌だ」 「じゃあ、いいや。自分で探るから」
押してダメなら引いてみろ!みたいなカンジでちょっとツンツンしてみた。 これでも高杉は教えてくれそうにないなら本当に私が探る。修学旅行はあと一日あるんだし。
「じゃあ、私は部屋戻るね」 「おー…」
素っ気無い返事をされてちょっとシュンとしていると後ろから私を呼ぶ声がした。
「水城!」
「おやすみ」 「…おっ、おやすみぃ…」
どんだけ私の心を奪っていけば済むんだ、あいつは。
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