今日は七月七日。七夕の日。 もうすぐ夏休みだというのに、笹の葉を出すのにせっせと動いている人も世の中にはいるみたい。 あたしの家も笹の葉はちゃんと出した。 短冊に願い事も書いた。 『恋愛成就』と。
七夕だからといって学校がなくなるはずもなく、いつものように登校していた。 昇降口から入って階段を登っていくとあたし達のクラスにありつける。 あたしは階段をせっせと登っていた。 そろそろ、エレベーターでもつけてもいい頃なんじゃないかな…。
「おはよう、あやちゃん」
「おはよ、妙ちゃん、神楽ちゃん」
「どうしたアルか、息切らせて。ゼェゼェ言ってるネ」
「階段勢いよく登って来たらこのザマ。」
教室に入ればすぐに妙ちゃんと神楽ちゃんが挨拶してくれる。 あたしにとって最初で最後の本当の友達なのかもしれない。 妙ちゃんは息を切らせているあたしのことを大丈夫?と心配してくれて、神楽ちゃんはガハハハと大口開けて笑っていた。
「そういえば、昨日の花火大会。あやちゃんは誰と行ったの?」
何センチか、肩が上下に揺れた。 これは言っていいものなのか…それとも言っちゃいけないのか…。 迷うけど、あたしは……
「お、沖田君…」
「マジでか!?」
言ってしまった。 別に妙ちゃんと神楽ちゃん以外に聞かれていなければ平気だろうと思っていたから。 花火大会に誰と行ったかなんて…。 他のみんなだって彼氏と行ったりしているんだから、さ。
「二人は誰と行ったの?」
「私達は私達で行ったわよ。それより…それ本当なの?」
「え?…ああ、うん」
あたしが返事をすると二人は顔を合わせて笑いあっていた。 それがあたしには何のことだかわかんなかったけど…。
妙ちゃんと神楽ちゃんが二人だけで笑っている頃、あたしのポケットの中では携帯が震えていた。 携帯を開くと『メール一件』の文字が目に浮かぶ。 そのまま、操作を続けると差出人が沖田君だということに気がついた。
『今日の夜、一緒に星見に行かない?』
多分、公の場であたしを誘うことは気が引けるんだろう。 だからわざわざメールなんかで誘ったんだ。 あたしも、こんな所で誘われても…。
あたしはメールを読んですぐに返事を打った。 前に比べたら返事をするのが随分早くなった気がする。
『うん、いいよ。何時にどこ集合?』
送信ボタンを押してから携帯を閉じないで待っているとやっぱりすぐに返事は来た。 携帯を閉じないで待ってて正解だった。
『じゃあ九時半くらいに迎えに行きまさァ』
あたしも返事を返し、携帯を閉じる。 携帯を閉じたら教室に銀八先生の姿が見えた。
「さあ、楽しい楽しいHRの時間だよ」
prev|next
|
|