「え…」


土方があたしのことを好き…?
名前で呼んでたのが名字になったのに?
総悟のお姉さんはどうなったの?


頭の中がグチャグチャになる。
あたしは土方が好きだったから、土方に告白されて嬉しいはずなのに…
なのに…どうして…


どうしてこんなに胸が痛いんだろう……


「じゃあ、俺帰りまさァ」

「そ…、」


花火が全て打ち終わると総悟は何も言わずあたし達に背中を向けて歩いていってしまった。
あたしが総悟の後を追おうとすると土方に引き止められる。
あたしの腕をつかまれて、抱きしめられて…


心臓がドクドクいってるのが自分でもよく分かる。
でもそれと同じくらい心臓が締め付けられるように痛い…。
それはどうしてだろうか……。


「土方…。総悟が……っ」

「お前は俺が好きなんじゃねーのかよ。」

「え…?」

「俺のこと好きだっただろ?」


うん、好きだった。
だけど、今「うん」と言っていいのだろうか?
あたしはそれでいいのかな…?


「うん。好きだったよ。」

「やっぱりな。」

「はい?」

「俺がお前のこと好きだなんて嘘に決まってんだろ。」

「はぁぁぁあ!?てめっ…ふざけんなチキショー!」

「お前は俺のこと好きだったんだろ。過去形。だから今は俺じゃなくて…」


土方はそう言うと総悟が走り去っていった方向に指を向けた。


「追いかけろよ。今からなら間に合う。お前の足の速さだったらな」

「…ありがとう、土方。アンタには色々と感謝してるから。」


それだけ言ってあたしは総悟を追いかけた。
多分、胸が痛かったのは総悟のせい。


あたしが総悟を好きだから。


「…ったく、相変わらずアイツは俺の嘘見破ってくんねーな」

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