ハァハァと息を切らしながらあたしは総悟の後を追う。
もちろん、あたしが総悟に追いつくのは無理だと分かってる。
でも、どこかで総悟があたしのことを待っていてくれたらいいな、なんて変な期待をしているんだ。


それに、総悟に伝えたいことがあるから…。
あたしはまだ総悟に一度も言った事がないけど…総悟だって勇気を出して言ってくれたんだから…。


「総悟ぉぉぉぉお!あたしだよ、優梨だよ!どこにいるの…?」


叫んだって無駄なことは分かってる。
無駄なことでもしたくなる今のあたしはすごく馬鹿。
馬鹿…本当にあたしは馬鹿だ。


今までちゃんと総悟のこと見てあげられなかった。
自分で自分の心を偽ってずっと土方を好きだと思い続けてきた。
でも、それはあたしの本当の気持ちじゃなくて、本当は影であたしを支えてくれてたあの人だったんだ…――。


「優梨…?」


総悟の声が聞こえたと思って勢いよく振り返った。そこには総悟がちゃんといた。
涙が出そうになった。
キーキーと音を立てて揺れているブランコを背に総悟はあたしのことを真っ直ぐ見つめている。


「どうしたんでィ、土方はもういいんですかィ?」


涙が出そうになる。
あたしは土方じゃなくて…そうじゃなくて…
総悟に言いたいことが沢山あるんだよ?


「ごめん…お願いだから、黙って聞いてて…」

「…?別にいいけど…」

「あのね、」


言い始めはドクンドクン跳ねている鼓動だった。


「あたしはずっと土方のことを見てきた。土方のことは本当に好きだった。土方と総悟のお姉さんのことが分かったときは本当に哀しくて涙を沢山流しちゃったの。でも、総悟があたしを支えてくれたから…あたしは今でもこうやって元気でいられるんだよ。」


「たまに、辛いときもある。でも、あたしのことを支えてくれる総悟に誰よりも感謝してる。それに…あたしが本当に好きなのは、土方じゃなくて……貴方なの…。総悟、だから…」


ドクンドクンと跳ねていた鼓動が今ではトクンという鼓動に変わっている。
緊張していた気持ちが言ってしまえば楽になるってのはこういうこと。
あたしの顔は今、涙でグチャグチャになっているはず。


「好き…っ」


総悟は泣きながら告白するあたしを思いっきり抱きしめて、とろけるようなキスをした。




好き
(今、大好きな貴方の元へ走り出せ。)

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