短編たち | ナノ
08
帰宅した時の響はなかなかにご機嫌だった。ちなみに帰宅は夜中の2時過ぎ。
もちろんあの女だけじゃなくてちゃんと那月くんとヤってきたんだろうけど。
「時雨もいたよな、あんとき」
ご機嫌にわざわざあたためたご飯を食べながら響が口を開く。
「うん、いた。あれはやりすぎ。最低」
「いいんだよあんくらいが。
那月、すげー怒ってたから」
なんでお前はそんな歪んでしまったんだろう。浮気ぐせは前々からだけど、一人の人間のリアクションがみたいからなんてクズな理由は那月くんが初めてだ。
「那月くん、泣いてたよ」
ぼろぼろ、ぼろぼろ
こんなクズを思って泣いていた。
「知ってる知ってる。だってさっきまで泣いてたしな」
「あのさあ、やりすぎなんじゃないの」
女まで使うのは、男同士のデリケートな付き合いだからこそ最低最悪の行為だと思う。
「だからいいんだって、
なかせてすげー甘やかすの、楽しいし」
「ほんと最低」
最低最悪
でも、好き
馬鹿みたいに好き
「那月くんが俺に、もう響と話すなって」
「あ?」
「俺はもう那月くんを泣かせないほうがいいと思うよ、響」
そんでもう俺はお前から離れてしまいたい。もう忘れちゃいたい、
「響、俺、来年には部屋出るから」
出てこなかった涙は、逃げた先の自分の部屋の玄関でやっと出てきた。
俺じゃ、男の俺じゃ、大切にも出来ないと言われた気がしてつらいなんて
那月くんにも、自分にも、ましてや響にも言えるわけない。
「なんで好きなんだよ、」
こんなに報われないことってあるのだろうか
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