短編たち | ナノ



04



「おはよ、」

「おはよー、って時雨顔色超悪いよ」


学校についてすぐ机にうつぶせになった。どうしよう、すごく気分が悪い。

「うん、すげー気持ち悪い、今」

「ゲロすんならトイレいけよー」

「うん」


なんだっけ、なんだっけ。

そうだ、朝から洗濯機を回して、乾燥機かけて、那月くんの分だけ選り分けてこっそり寝室に戻しておこうと思ったのがそもそもの間違いだったんだよ。



「…ん、ン、ちょ、響、朝だからッ、」

「いーじゃん、シよーよ」

イヤホンを取るのを忘れてて、ガンガンすきなアーティストの曲を聴きながら寝室に入ったら最中だったわけだ。


「……あー、うん、えっと那月くんの服これね」


とんでもない吐き気とめまいがして、ぐらぐらして、逃げるように部屋を出た。
完全に油断してたんだよ。だってまだ6時だよ、6時からおっ始めんなよほんとに。


那月くんは顔を真っ赤にしてパニックしていたし、響はそんな那月くんを愛おしげに見てるし、

しかも見間違いでなければ二人は繋がってたし、


さすがに目の当たりにしたことはなかったからすごいショックを受けてしまったのだ。


なんて自分勝手なんだろうと思いながらもう一回寝て、起きて、そしたらさらに体調が悪化していて。


「だめだ気持ち悪い」

「だから吐くならトイレいけよって」

「吐かねーよ」


弱い。弱すぎだよ俺のメンタル。
例によってどうせ顔には出てないんだろうけど。

この無表情さえどうにかなれば担任を誤魔化すこともできたのに。


ほとんどつっぷして授業を受けた俺にさらなる試練が与えられるなんて思ってもみなかった。



「時雨くん、いる?」


うつぶせになっててもわかる。
この声は、一週間に何回も嫌でも聞かされるあの艶っぽい声だ。


勘弁してよ、君には響がいるんだからなんだっていいじゃないか




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