03
いつから好きかと言われても、どこが好きかと言われても曖昧で答えられない。
好きだから好きだし、いつからなんて覚えていない。
ただ分かるのは響に恋人が、それも男の恋人が出来たことで泣いてしまうくらいには好きだ。
泣くしつらいのにそんなの言えるわけもなく、離れられずにずっと家政婦みたいなポジションに居座っている。
好きだ、すごく。
顔を見ればドキドキするし、表情には出ないらしいがお祭り状態だ。
だから、だめなのだ。
那月くんはすごくかわいい。
くりくりな目にころころかわる表情。俺と違ってふわふわな髪の毛に華奢で可愛らしい顔。
なにより那月くんは響を想って素直に微笑むことも笑うことも怒ることもできる。
だから響が彼に惹かれたのはしょうがない。なんたってかわいいんだから。
枕に顔を埋めてイヤホンをした。
そうでもしないと薄い壁の向こうから嫌でも聞こえてくる甲高い嬌声とギシギシいう音。
窓に目を向ければざあざあ降りだったのが小雨に変わっていて、明日になれば晴れることを示唆していた。
窓は少しあけてある。
雨特有の、湿ったじめじめした香りをかぐために。
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