子ネタ

パニックリターン2



137話、5D'sを支える魅力的なサブキャラをもっと見たかった妄想その2。




【初期メンバーで】

「やだ!俺絶対逃げないからね!」
ラリーはいやいやと首をふった。あのなぁ、と苛立たしげにブリッツが眉を寄せた。「逃げないと死ぬぞ!」今にも首根っこを引っ付かんで連れていきそうな気迫のブリッツにタカははらはらしていた。彼らを焦らしていたのは空の物体だった。
「逃げて、どこに行けばいいんだよ!今までいたところも再開発だって追い出されて!もう嫌なんだ!」
「だからって、死んだら意味ないだろ!」
「やだ、やだよぉ…。遊星ぇ、遊星…」
ラリーはとうとうぐずぐずと泣き出した。ラリーが出した遊星の名前に三人は顔を見合わせた。遊星がシティで暮らすことは四人ともが納得していたことだったが、ラリーだけはうまく割りきれていなかった。ラリーにとって遊星は、ぼろぼろの自分に生きる意味と居場所を与えてくれたヒーローだった。遊星を一番信頼していた。いつか帰ってくると信じていたのだ。
ナーヴがラリーの肩を引き寄せる。
「でも、遊星言ってただろ」
ダイダロスブリッジが完成した後、遊星はゴドウィンの手により四人を軟禁状態にさせてしまったことを謝罪した。お前たちを巻きこんでしまった。すまない。俺にはお前たちと暮らしていく資格はない。遊星の顔には色濃い苦悩が張りついていた。そしてラリーの視線を避けていた。仕方のないこととはいえ一度遊星はラリーを死に追いやった。自責の念が遊星を苦しめていた。ラリーは遊星を責めようなどと思ってもなかったのに。ラリーはうわぁん泣き叫んでナーヴの胸を濡らした。

「お前ら、まだここにいたのかよ」
げっとブリッツが苦虫を噛み潰した顔をした。見覚えのある顔がそこにあった。数年前に遊星のDホイールをかけて戦ったいけすかない男、瓜生。
「俺たちのことはほっといてくれよ」ブリッツが投げやりに言う。
「はぁ?」瓜生は明らかに迷惑そうな顔をした。「まさかアレと心中でもするつもりか?死にてぇのか?」
「お前こそ逃げないのか」
「逃げるに決まってんだろ。不動遊星ともう一度戦うまで俺は死ぬわけにはいかねぇからな」
勝手にキングになって帰ってこなくなりやがって!瓜生はぎりと唇を噛んだ。遊星、という言葉にラリーが反応した。「遊星がお前なんかに負けるもんかー!」もう自棄だった。脈絡のない売り言葉を「んだとぉ?」と瓜生も買った。
「じゃあ俺様が不動遊星に勝つところを見せてやるよ!だから今は逃げんだよ!」
瓜生はナーヴからラリーを引き剥がした。「遊星は負けないもんばかぁーッ!」ラリーはべーっと舌をだして走り出した。おいラリー!とタカが追いかけた。ブリッツはまじまじと瓜生を見た。ああなったラリーを動かすなんて。
「なあ、お前ら」瓜生は二人に問いかけた。「一応確認しとくが……キングってどれくらい強いんだ?」
「めちゃくちゃ」
「めちゃくちゃ」
「うわああああ」
瓜生は頭を抱えた。あのガキの前では負けたくねー!でも負ける気しかしねー!二人はやれやれと顔を見合わせ一年前と変わらないお調子者をひっぱっていった。



あれから仲良くしてたらいいのにな。

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