子ネタ

138話みた






おれがいるからまちのみんなは不幸なんだ。おれさえいなければよかったんだ。遊星は時々気が狂った。ジャックがいくら止めても自分の頭を血だらけにするのをやめなかった。なぜだと聞いても遊星は答えなかった。やがてシティに行き隠蔽された遊星の過去を聞いて、ああなるほどなと納得したものだ。憎しみはわかなかった。親の仇として遊星を憎むにはあまりにも両親という存在が遠かったのだ。ジャックは両親の顔さえ知らない。
遊星が笑っている。ああようやく、とジャックは思った。遊星は自分の存在意義をみつけたのだ。ばかばかしい意義を。つまりは自分が犠牲になることで街を救えるかもしれないという贖罪を。まったく背中が痒くなってくる自己犠牲だ。あの遊星の考え方は吐き気がするのた。だってあんなにもみっともなく震えていて、何がすくえるというのだろう。矛盾している。人から嫌われるのをなによりも恐れるくせに、自分は孤独に生きるのが一番お似合いだと思っている。なぜならばそれが遊星の罰だからだ。
「クロウ」
遊星が諭すように言った。それだけでクロウの肩から力が抜けていくのがわかった。ジャックはそれを見ていただけだった。そうして結局、遊星の足の震えに気づいたのはジャック一人だけだった。
ジャックは遊星の肩を小突く。
「神にでも祈ろうか」苦笑いをする。今さら神頼みでどうにかなるものではない。「お前が死なないように」
「神か――」「それとも仏か?」「……痣でもいい」「ならばオレはこいつに祈るか」「レッドデーモンズドラゴン…?」「オレの信じるもの」
お前は?と聞くと遊星はぎくりと肩を震わせた。
「お前の信じるものは」
遊星ははっと息を飲む。どれだけ貶されてきても守り続けたもの。ぐっとこちらを見つめる目。
「絆」
迷いのない答えにジャックは満足げに頷いた。

「ならその絆とやらに祈るといい」





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