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ーーxxxx年xxx王国にて。
その日、人々に恐怖をもたらした魔王サタンが伝説の勇者により討伐された。勇者は魔王討伐の証とし、魔王の片方の角を王に献上する。
勇者が魔王を討伐したことは瞬く間に国中に広まる。そして、今まで人間を襲っていた魔族は域を潜め、世界に再び平和が訪れたのだった。
ーー2014年東京にて。
ネオンの光が闇夜を照らす繁華街の路地裏に幼い少年が1人。その身には一回りも二回りも大きくぼろぼろYシャツを纏い眠っていた。その頭には片方が欠けた角が生えていた。
「坊や、大丈夫か?」
「ん…?」
「意識が朦朧とし、ぼろぼろの衣服を纏った少年を保護しました。場所はーーーー」
警察に保護された少年は、記憶喪失と判断された。もしくは、アニメの見過ぎだ子どもか。
「だから!よは!まおうサタンだ!」
先ほどまで生えていた角は気がつけばなくなり、子ども用の衣服を着せられた少年は自身に質問を投げかける女性の警官にそう答えている。
「うん、そうだね。おかあさんの名前はわかるかな?」
「はは?」
「うん、そう」
「よには、ははもちちもおらぬ。よはまおうだからな」
優しく問いかける警官は一瞬何かに気がついたような表情をするも、すぐに元に戻り優しく穏やかな顔に戻る。少年にはちょっと待っててねとだけ問いかけ、その場をさった、
少年は貰った棒付きの飴を舐めながら、じっと己の掌を見つめる。本来の手のひらよりも幼い手のひら。
そして、自信を魔王だと言っても信じてもらえないこと。全く見知らぬ土地の風景に、変わった衣服を着た人間たち。
外を映し出すガラス窓をに映る自身の姿を見て悟った。
「(余、幼くなってる?)」
この推定4歳ほどの少年こそ、勇者により討伐された魔王サタンそのものであったのだ。
魔王はどうしてこうなったのかと思考を巡らせた。魔王自身、世界転移魔法を知っているが死の間際それを使った記憶はない。そもそも転移魔法を行き先を知らないと使用はできない。そして、片方だけが欠けた角。勇者にくれてやった角はなかった。
つまりは全くと言っていいほど心当たりがないのである。
「(余、知らない)」
魔王は馬鹿な男ではないが、自身の理解の及ばないことを目の前にし、思考を放棄した。魔族だけど、これは神の悪戯だと全部神のせいにした。
魔王は日本では珍しい出生登録がされず、戸籍を持たない子どもとして扱われ、苗字名前として新たに戸籍が作られる。
そして、孤児院に迎え入れられたのである。
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