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気がついた時には私の声帯は聞き覚えのある声だった。何を言っているのか分からないと思うが、私も分からない。
社畜として生き、推しに全財産を貢ぎ、推しのATMとなった私は、過労で死に絶えた。その後、幼児になっていたお決まりなテンプレ転生は今は置いておこう。それに、私の股にぶら下がって無かったブツがぶら下がってだことについても置いておく。よくあることだ。
幼い頃は美少女ボイスだったんだ。だが、成長するにつれ段々と聞き覚えのある声になっていき、声変わりをした時に気がついた。
ーーcv石◯彰じゃねぇか!!
と。だが、それだけならなんの問題はない。問題があったのは私の容姿だ。醜いわけでも、ブスでも、異形でもない。むしろ顔立ちは整っている方だと思う。ただ、問題は黒髪の優男。フレームが細めの眼鏡をかけた時には胡散臭さが増す。
何が言いたいか、分かるだろう。私は所謂「あ、こいつ裏切るな」と一目で分かってしまうタイプの石◯彰だったのである。主人公達の仲間面をして最後に裏切るタイプの。
今の流行りなら攘夷がJOY!してるヤツとか、鬼になろうと勧誘してくるヤツとか、攘夷志士にならないかと勧誘してくるヅラとかいるだろう。もしくは、超絶大御所のcv石◯彰とか、いるだろう。絶賛映画公開してるのになぜ、このタイプなのか。神様も悪戯がすぎる。むしろ、神の推しがこのタイプだった説も出てくるくらいだ。
神の悪戯、否、神からの贈り物は顔面の造形、声帯だけではない。少し変わった能力も授けられた。簡単に言えば魔法。火を起こしたり、風を起こしたり、物を浮遊させたり。なんなら、視界に入ったモノにバフデバフをかける事もできてしまう。
そう、俺は魔法使いになったのである。30過ぎたら魔法使いとかそういうものではない。断じて違う。この見た目。魔法使いになるわけないだろう。
これが何処ぞのRPGやモンスターがいる異世界なら映えただろうに。魔王側の人間として。しかし、残念ながらこの世界は極々普通の現代社会。私の能力などあまり意味をなさないのである。魔法を使ってお金を稼ぐ事もなく、学生時代にこの見た目スペックに相応しい事で小銭稼ぎしたもので十分暮らせている。寧ろ、20代半ばだというのに趣味で喫茶店を始めてしまうくらいには潤っている。
これも神の贈り物なのかもしれない。ありがとう神様。ただ、なんでこのタイプなのか、一回よく語り合いたいかな。私の好みのcv石◯彰はGo to westなタイプなんだけどな。
嘆いてばかりもいられない。
今日も今日とて自由気ままに、のんびりと、私は"私"らしく。主人公を遠くから見守り偶に意味深な助言をするタイプのcv石◯彰になろうじゃあないか。お前絶対裏切るだろ!と思わせといて、結局お前裏切らんのかーい!となるタイプになるのだ。
そう思いながら小さなプレートを表に向けた。
さぁ、今日も仕事だ。
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