01

 この世に生まれた生物は生まれて死ぬを繰り返す。どのタイミングで生まれ、どのタイミングで死ぬかは様々で、それはもちろん、他の生き物によってもたらす死ぬ要因もあるのだ。
 ぐありと大きな口のような器官をあけたおどろおどろしい蛇のような体をした化け物。その前には青年が立っており、青年は後ろを振り返ると笑いかけた。振り返った衝撃で短くざっくばらんに切り揃えられた髪が舞う。
「悪い、先、死ぬわ」
 まるでラメーンでも食べに行こうと誘うようなフランクさでそう告げると頭からぐわりと飲み込まれ、捕食された。その時、聞こえたのは背後にいた同い年くらいの男たちの悲痛な声と、ポツンとまるでそこに立っているかのように残された下半身のみであった。

 そんな無惨な死を遂げた青年の魂、つまり俺の魂はは猛スピードで輪廻の輪を駆け抜け、別の肉体に宿り人間へと転生を遂げる。俺の魂に宿った記録が覚醒した時、齢五歳の幼い少年だった。母さんと二人暮らしで、昔と比べ裕福ではないがそれでも幸せいっぱいの暮らしでなんの不満もない。
 それでもまだ五歳。母さんの手伝いといってもしれている。食器を運んだり、洗濯物を畳むのを手伝ったりくらいだ。もっと楽にさせたいが出来ないのがもどかしく地団駄を踏んでしまいそうなほど。
 それに母さんは厄介なモノを憑けやすい体質なのか、俺を夜間の保育園へ迎えに来るとよく肩にナニカがのっている。身体の不調はそのせいだろう。葉っぱの護符(仮)をもたせてもすぐに消えてしまう。これは俺の呪力と術式を使用したもので、きちんとしたものではなく、あくまでカッコ仮。一度だけ所持者をアイツらから守ってくれるというもの。本当はちゃんとしたものを持たせてあげたいけど、今の俺では精々一回が限度。それに俺が知らない間に殺されたりでもしたら辛すぎるから、せめてもの気持ち。
 まだ一人で外に出してももらえない年齢だ。こっそりとついて行ったら怒られたこともあるが、どちらかと言えば心配させてしまったと言うのが大きいかもしれない。そこは反省している。
 だから、今日もお迎えが来るまでえっちらおっちらと折り紙で人形を折り呪力を込めるのだ。
「名前くん、お母さんがお迎えに来られたわよ」
「はぁい!!」
 顔をあげると白いダウンジャケットを着た母さんが手を振っている。胸の奥から込み上げるものを感じ、迷わず母さんの柔らかでたわわに実った胸に飛び込んだ。ちらりと視線を上げると肩には小さな蠅頭の姿が見えた。見た目はブサかわいいのだが、母さんに憑くとは、何事か。俺の護符はもう消えちゃったのかな。
 母さんにしゃがんでもらうとスッと手でソレを払い除けた。ぐげっと汚い声をあげるソレは灰のようにさらさらと消えていった。母さんは不思議そうに見ているが、今更なので気にしない。
「名前くん、帰る用意しよっか?」
「はぁい、センセ」
 俺は先生に手を引かれながら、帰る準備をした。今日はもう保育園でご飯は食べてるし、後はお風呂に入って、寝るだけ。帰り道は俺も居るし大丈夫。いくら幼児退行したとしてもその程度問題はない。肉弾戦ができないくらいかな。それ程まで強いやつが出てきたら、母さんを連れて逃げて、後は呪術師に丸投げだ。がんば。

 当たりの気配を気を配りながら帰っていると、母さんが声をかけてきた。
「名前も来年から幼稚園だねぇ、ランドセルの色なにがいい??今度、ママお休み貰ったらから一緒に行こうか?」
「ランドセル…!いいの!?」
「勿論!名前の好きなの選んでいいんだよ」
 ランドセルなんて買ってもらえないと思っていた。そこまで裕福な家計状況じゃないし、諦めていたのだ。最近のランドセルは色んな色もあるし、形も豊富。選ぶのが楽しみになってきた。そこまで高いものでなくてもいい。
 それよりも久々の母さんとの買い物。思わず足取りが軽くなった。

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