ジコチューの黒兄弟 昔の夢 [ 13/16 ]

豪華な屋敷、整えられた中庭。トーノは灰色の背景の中、そこに立っていた。


はて、ここはどこだったかな?

あぁ、ここはブラック家の……


トーノは首をかしげ、回らない頭で過去の記憶を探る。


夢の中かな、ここは

生まれてから何度が経験のある浮遊感、あれから私はたまに不思議な夢を見る

きっと、今日もそれだ


灰色の世界をトーノは歩き出した。中庭に向かうと、どこか懐かしい声がトーノの耳に届く。だけど、その内容は聞こえなかった。


…あれは、


中庭でトーノが目にしたのは、まだ幼いシリウス・ブラックとその弟、そしてトーノ自身だった。


私の、過去の記憶だ。トーノはぼんやりと認識した。ここは彼と別れた時だと。

過去のシリウスは幼いトーノに向かってなにか怒鳴りつけている、その後ろに黙りこんでいるレギュラスがいて、それに対面するようにトーノは立っていた。怒鳴られている幼いトーノはただ静かにシリウスを見ていた。


子供のする目じゃないな。自分のことだがトーノは嘲笑うように呟いた。まだ感情のまま怒鳴っているシリウスのほうがかわいいとトーノは思った。


トーノが気付いた時にはいつの間にか辺りは静かになっていた。トーノが彼らに目を向けると怒鳴り疲れたのかシリウスは肩を上下させながら息をついていた。


「シリウス……」


小さく呟いたのは幼いトーノだ。トーノはシリウスの後ろにいるレギュラスに目を向けた、あの時私はレギュラスを見ていただろうか。


僅かに濡れた瞳を見た瞬間、トーノの感じていた浮遊感がとたんに重苦しいものに変わった。夢から覚める合図だ。


ぐら、と意識が揺らめく。トーノが目を閉じる間際、シリウスの言葉が聞こえた。


「おまえなんてっ、だいっきらいだっ!!」







「……はぁ」


嫌な、懐かしい夢を見ちゃった。こんな夢を見ると、毎回面倒なことが起きる。トーノは一人ベットの上で溜息をついた。

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