7日の彼女;Attractive stage  中編

そんなこんなで俺と花形と浅海は待ち合わせの駅で彼女を待っていた。
彼女には花形と浅海が来ることは話していない。
あわよくば彼女が一緒に行くことを断ってくれることを祈って連れてきたのだ。

「おい、浅海。名字さんが帰れって言ったらちゃんと帰るんだからな?」
「いや、名前ちゃんは藤真と違って優しいからそんなこと言う訳ないもん!」
「はぁ?何言ってんだ・・・「お待たせ!」

俺と浅海が口論を始めようとした時、彼女が到着した。

「あれ?花形君と浅海さん?だっけ?どうしてここに?」
そういう彼女に俺が説明をしようとすると

「実は・・「名前ちゃん、私の事覚えてくれてたんだね!!!すごくうれしい!!!」
見事に浅海に邪魔をされた。

「ちょ・・・「浅海さんのことはよく覚えているわ。すごく明るくていつも元気だったから」
ニコっと笑いながら浅海に対応する彼女の笑顔に、今だけはやめてくれと願ってしまう俺だった。

***

「へーそうだったんだね。じゃあ一緒に行きましょう?」
俺はこの状況を説明すると、彼女は嫌な顔一つせずそう言い放った。

俺たちは早速電車に乗るために駅のホームへと向かうと、到着した電車に次々乗り込んだ。
運よく電車の席が空いていて座ったが、なぜか名字さんの隣に浅海が座って俺は彼女から一番遠い場所に座っている。
彼女は浅海と楽しそうに話しているが、どう見ても浅海が一方的に彼女に話している状況で笑顔で話を聞いている。

「藤真。悪かったな」
俺が黙って座っていると隣に座っている花形に声を掛けられた。

「なんだよ。もうここまで来ちまったんだからしょうがねぇよ」
「いや、藤真は名字さんと二人で来たかったろ?」
ふて腐れながら言う俺を見て花形が申し訳なさそうな顔をしながら言った。

「まぁ、そうじゃないっていったら嘘になるけどな。」
「あはは。ホントに正直だな。藤真は。」

俺たちがそれぞれ話しているとあっと言う間に駅についた。
改札から出るとグーッと伸びをしながら浅海が言った。

「へぇーこの駅ってこんな感じなんだ!降りたことないから知らなかったよ!!」
「そうだよね。この駅は学校か住民くらいしか滅多に降りないみたい。私も大学がここじゃなかったら降りてなかったよ」
「そんな駅に通ってる名前ちゃんも入ったことない店を藤真が知ってるだなんてねー」
「なんだよ!知ってちゃわりーのかよ?!」
「誰もそんなこといってないじゃない。藤真って自意識過剰なんじゃない?」
「はぁ?なんだそれ!誰が自意識過剰だよ?!」
「誰って藤真・・・「はいはい終わり!藤真も飛鳥も!!」
俺と浅海の口論を止めたのは花形だった。
花形の隣には少し困った顔をして俺たちを見ている名字さん。
あーあ。またやっちまった。どうも浅海がいるといつもこんな感じになるんだよな・・・。

口論に避けるべく俺は名字さんの隣に行くと

「藤真君って浅海さんと仲がいいのね」
苦笑いしながら言う彼女のその言葉は、俺の心に釘をさした。


一方その様子を見ていた花形は
「おい、飛鳥。やりすぎだぞ?」
「だって!藤真が!!!」
「だってじゃないだろ?あれじゃいくら何でも藤真がかわいそうじゃないか」
「・・・ごめん」
「いいから、これからは大人しくしてるんだぞ?」
「はーい」

どうやら浅海を宥めてくれたらしかった。

***

気を取り直して俺たちは店へと向かって店内に入ると

「じゃあ、私は透と見るから!!」
そう浅海がいって花形を引っ張っていく。
たぶんアイツなりに気を使ってくれたらしい。

「藤真君、一緒に見てくれない?」
彼女の方から一緒にと誘われて俺の気分は少し回復した。

店内を端から見始めると彼女がここに来たかった理由を思い出し
「そういえば、どういう感じのをあげるか決めてんの?」
「んー去年は小銭入れをあげたんだよね。来年は社会人だし今回は名刺入れにしようかなって!」
「ふーん。来年社会人ってことは同じ年?」
「うん。同じ年だよ。中学が一緒だったんだ!」
「へぇ。」

話しながら店内を見ていると
「あ!これいいかも。」
急に立ち止まった彼女はディスプレイを覗き込みながらそう言った。
どうやらプレゼントによさそうなものを発見したらしい。

「ねぇ。藤真君、これってどうかな?」
彼女は1つの名刺入れを指さした。それは、レンガ色でシンプルな二つ折りタイプの名刺入れ。
味わいが出ていて、俺もいいなと思うデザインだった。

「いいんじゃない?使いやすそうだし!」
「だよね。うーんこれにしようかな・・・」
そういい彼女は店員に声を掛けると

「藤真君、私、会計しちゃうから他のところ見てていいよ」
そう言われて彼女を待っている間、俺は他の所を見始めると
花形達と合流した。

「あれ?名前ちゃんは?」
「ああ、今会計してるよ。」
「そっか。」
「藤真、ここいい店だな。」
「だろ?前から目をつけてたんだよ」
「俺もさっきパンツを買ったんだ」
「へー俺もこの前来たときシャツを買ったぜ」

俺たちが話していると

「みんなお待たせ!」
会計を終えた彼女がこちらへと歩いてくる。

「買えたか?」
「うん。ばっちり!ありがとね藤真君」
そう言い笑顔を向けてくれた。

「ねーねー。いい時間だし飲みに行かない?」
「たしかに飲みたい気分だな」
浅海と花形がそういい始めて、俺と彼女は顔を見合わせると

「「いい場所連れて行ってやる(あげるよ)」」
2人声を合わせて言った。

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