『んーっ、いい天気だあーっ!』


暖かい日差しの中、うーん、と伸びをしながら楽しそうに歩いていく名前。今日は買い物にでも行こう、と親友である由香を誘ってショッピング中なのだ。


「名前、うかれすぎ!」

『えー、だってー。こーんな良い天気の日に、買い物行けるなんてねー』


そう言いながら、2人は目的のショッピングモールへ向かっていた。


「あ!これ似合うんじゃない?」
『えーなになにどんな、の…いやいやいやいや、こんな可愛いの私には無理だって!』


由香が差し出したのは、フリフリレースのフワフワスカート。まあブランドでいうといわゆるリズ〇サのような…。うわー、これ死亡フラグだわー、なんて思いつつも、着てみたい…と思う乙女心がないわけでもない。


「きっと越前くんも喜ぶってー!」
『えっ、…かなあ?』


由香の一言に顔を赤らめつつ、今出てきた名前の主に思いを馳せた。―――越前くん…越前リョーマは私たちと同い年で同じクラスの男の子。テニス部に所属してて一年にしてレギュラーに入ってる凄いやつ。そして…一応私の彼氏。リョーマ、今、何してるかなあ。
その後も2人の楽しいショッピングタイムは続いた。――そう、あれを見るまでは…。


『えっ嘘…………』


あまりの驚きに、知らず知らず声を出していた。


「?どーしたの?」
『由香…あ…あれ…』


由香は青ざめながら指差した方を恐る恐る見た。そこには――…


「え!?は!?え、越前くん!?なんで女の子と一緒なの!?意味わからん!どういうことなの!」
『さ…さあ…』


そうそこには、リョーマと女の子が2人並んで街を歩いている姿があった。リョーマはテニス部のレギュラージャージ、相手の女の子は青学の制服。青学の子でみつあみ…確か…竜崎、さん…?

「ちょ、ほんとわけわかんないんだけど。まじであいつなんなの!?ちょっと絞めてきてもいい?いいよね?」
『いや、それはだめでしょ。』
「だって!気にならないの!?」
『いや、めっちゃ気になるんですけど』


混乱しまくりの由香は自分でもわけがわからないことを口走り、名前は、呆然としすぎて反応がむしろ冷静であるかのようになっていた。
2人がそんなやりとりをしている間に、2人の視界からリョーマたちは消えていた。それに気づいた2人は少し冷静さを取り戻し、ひとまずその辺の喫茶店に入ることにした。もちろんただ休憩するためではない。お互いを落ち着いて考えをまとめるためである。
少しは落ち着いたのか、先ほどよりも冷静な様子の由香がねえ、と口を開いた。


「…さっきの、竜崎、さん?」
『やっぱり由香もそう思う?』
「あんたもそう思うかあー。」
『竜崎さんって…確か数学の、あの竜崎先生のお孫さん、だよね?』
「あー……」


あの竜崎先生。青春学園男子テニス部の顧問の先生で、3年生を受け持つ数学担当の先生。特に関わりはないはずなのだけれど、存在自体が濃すぎて、忘れようにも忘れられない。


「あのね、あんたは知らないかもしれないけど。」
『んー?』
「竜崎さんと越前って付き合ってるって噂、あるんだよねー。学校じゃ、あんたか竜崎さん、どっちかと付き合ってるんだろうって専らの噂よ。青学の生意気プリンスの恋路は果たして…!?みたいな感じでね。」
『まじで!?』


噂、それは初耳だ。まあこういった類のものは、本人にはなかなか入んないものだし。


「アンタと越前くんが付き合ってるって公表したらそんな噂すぐ無くなると思うんだけど…」
『いやー、したいけど、リョーマファンの方々が怖いからなあ…』


リョーマファンの方々はすごく怖い、らしい。私がリョーマと仲良くなる前の話だが、仲良くしていた女の子が呼び出されたとかなんとか、噂で聞いたことがある。
その後少し喋って、2人はそれぞれ帰宅した。


『リョーマのバカ…浮気なの…?』


家に帰った名前は、とにかく電話をしてみよう!と、携帯を取り出した。短縮からリョーマの名前を呼び出し、コールする。プルルルと発信音が鳴るが、一向に出る気配がない。ぷつっという音ともに、留守番電話に切り替わってしまった。
《只今電話に出ることができません。ピーッという発信音の後に―――………》
最後まで聞かずにぷちっと電話を切った。


『…………はあ。』


お風呂に入った後、名前は再度リョーマに電話をした。しかし、再度留守番電話に繋がる。その後も何度もかけたものの繋がらない。不安と共に怒りが募ってくる。こんな時間まで、どこでナニしてるの?人からの電話にこんなに出ないなんて!緊急の用件だったらどうするのよ!
怒りに任せて電話をかける。リダイヤルを押す手つきも荒々しい。プルルと先ほどと変わらない発信音が鳴る。ぷつという音と共に留守番電話に切り替わった。
《只今電話に出ることができません。ピーッという発信音の後にお名前とご用件をお話ください。 ピーッ》

怒りを含んだまま、口を開いた。



『10分……3分以内に電話掛けなおしてくれなかったら、もう口きかないんだから!ねえ、竜崎さんとデート楽しかった?』
(ちょッ、なにこれ!?誤解、誤解だから!!)


前サイトから移動。2016.11.18
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