act.57




翌朝、すっかり熱から回復して私の気分は爽快だった。軽く鼻歌なんか歌いながら気分よくカーテンをあけると、

「………」

天気は雨だった。萎えた。テンションさがったわ。

完全に湿気た雰囲気で登校すると、朝からテンション高い低い教師や先日からギンギラギンにさりげなく眩しい笑顔でこちらを見守ってくるオカン気質の男子生徒の絡みを華麗にかわし教室に行くと何故かもぬけの殻で、はてどういうことかと考え込んだところ今日は朝から移動教室だったことを思い出したはいいものの移動先がわからないし今日に限って携帯忘れるしで私のテンションは完全に下がっていた。もうやだ。

「…………」

先程1時間目が始まるチャイムが鳴った。
もう面倒なのでサボろうと決め込んだ私は、カバンを教室に置いたまま単身生徒会室に来ていた。本当は屋上庭園が一番よいサボり場所なのだが、今日は生憎の雨のため、仕方なく今の時間は誰もいないはずの生徒会室に身を潜めることにしよう。

「失礼しまー…あれ」

誰もいないけど一応断りの言葉を述べて生徒会室に入ろうとしたら、先客がいた。

「…………」

先客は部屋に設置されているソファーに横になり、寝息をたてている。眼鏡は掛けっぱなしだ。

「不知火先輩…眼鏡くらいはずしましょうよ…」

起こさないように、そっと呟く。
相変わらず立派な先輩の前髪は、雨の湿気に負けることなく綺麗に一部だけ流れに逆らっていた。

「ふーむ」

先輩がソファーで寝てるのなら私はどこに寝ればいいんだ。畳か?いやいやあんなとこで寝たら誉先輩に怒られてしまう。

「あ、」

ふと顔を上げた私の目に映ったのは、普段不知火先輩が座っている革張りで大きめの椅子だった。

「(これ一度座ってみたかったんだよね)」

へへ、と小さく笑いながら椅子に座る。お、お、おお…!すごい、なんか社長椅子っぽい!いい感じに背もたれがフィットする。

「…………」

眠くなってきた。
窓越しに聞こえる雨音に耳をすませながら、私はそっと瞼をおろした。










「―――っ、やっべ!今何、時…」

徹夜で生徒会の仕事をして、もう朝も近かったため少しだけソファーに横になろうと思ってソファーに身を沈めた瞬間から記憶がない。たぶんそこから爆睡だったのであろう。

「あれ……俺眼鏡外してねてたのか……」

いつの間に…、と思いながら起き上がり、眼鏡をかけて時間を確認しようと顔をあげると、

「ん!?」

いつもは俺が座っている椅子に、何故か咲月が座っていた。しかも器用に眠っている。というか、何やってんだこいつ?授業は?

「…………」

気持ち良さそうに眠る咲月を見ていたら、起こすのが憚られた。……まあ、いいか。

窓の外ではしとしとと雨が降っている。雨音の心地よさに思わず笑みが浮かぶ。

「仕方ない、起きるまで待っててやるか」

咲月を起こさぬようデスクの上の資料をそっとかき集めると、俺は再び仕事を再開した。




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