act.30




子猫がさ、居たんだよ。
木の上に。だから助けてあげようと木のうろに足をかけて登っていって、猫のところまで到達したところまではよかったんだけど、さ。

まさか降りられなくなるとはな…。

予想外の展開に咲月さんびっくりですよ…。でも案外木の上って心地いい。おまえさんが登る気持ちもわかるよ、と腕の中の子猫を撫でた。

「さーて、どうしようかなー…」

口調こそ軽くしているものの、内心すごく焦ってますよ、ええ!!

今日は短パンのジャージはいててよかったなあと思いながら、太い枝に腰掛けて幹に手を付いて誰か通らないかなと下を眺めた。誰か助けてくれ。

「………何してるの、咲月ちゃん」

助け来た!しかしよりによってお前か、水嶋先生。先生はじっと私を見てから溜め息を吐いた。

「うわあ、咲月ちゃんスカートの下にジャージなんかはいちゃだめだよー。男子の夢壊してる」

「ちょ、てめー!!私がジャージはいてなかったら堂々とパンツ見てることになってんぞ!!!」

「ねえ咲月ちゃん、本当に助けてほしい?」

「ごめんなさい助けてください!!!!!!!」

助けてもらいました。





















「子猫助けてたんだ」

「そうですよ」

私の腕の中の子猫を見て微笑む水嶋先生。なんだ、この人こんな顔もできるのか。

「………なに?咲月ちゃん」

「いえ、別に」

「なるほど、襲ってほしいと」

「ちーがーいーまーすー!!腰を!抱くな!」

「なんだ、つまらない」

私の腰からぱっと手を離す水嶋先生。ああよかった貞操は守られた。この人と一緒にいるだけで妊娠しそうだ。

「いやさすがに妊娠はしないよ」

「人の思考を読むな」

子猫をいじりながらさらりと言ってのける水嶋先生を睨んだ。

「水嶋先生ってなんでこう、一人だけ18禁なんですか」

「いやいや、なにそのレッテル」

「つまりエロいんだよ」

「仕方ないじゃん。知ってる?咲月ちゃん、男はみんな獣なんだよ」

「おいコラ全年齢だぞこのサイトは」

「咲月ちゃんもさ、注意してないと食べられちゃうよ?」

「聞いてないしこの人!!!!!だぁから腰を抱くな!」

なにこのデジャヴ。とりあえず水嶋先生の鼻に指突っ込んどいた。鼻フック。

「………女の子がイケメンに鼻フックとかしちゃだめだよ」

「秘技・イケメン殺し」

ていうか自分でイケメンって言ったよこの人。残念すぎる。
しかしそろそろ可哀相なのでやめてあげた。(そしてハンカチで手を拭った)

「水嶋先生、その子猫どうするんですか」

先生の腕の中で穏やかに眠る子猫と、水嶋先生を見比べて言う。水嶋先生はそうだねえ、と呟いて、

「琥太にぃにでも預ければなんとかなりそうじゃない?」

「あー、そうですね。星月先生ってなんだかんだで世話焼きですよね」

「だからきっとこの子の面倒も見てくれるでしょ」

そうですね、と頷くと、背後から嫌そうな溜め息が聞こえた。

「なに俺のいないところで話を展開させてんだお前ら…」

「あ、琥太にぃ」「星月先生」

水嶋先生が星月先生にゆっくりと近付いて、子猫を手渡す。星月先生は迷惑そうな顔して子猫をしっかりと受け取った。やっぱりこの人いい人だなあ。

「まぁ、子猫の件はいいとして、朝野」

「うい?」

「保健室に来なさい」

「………」

バレたか。水嶋先生が不思議そうに首を傾げているところを見ると、どうやら水嶋先生は誤魔化せたようだ。が、さすが保険医、あなどれない。まさか一発でバレるとは思わなかったよ。

木を登ったときに少し足を捻ったことに、さ。







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