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ついにその日はやって来た。文化祭だ。最初は生徒だけのステージで開会式兼出し物をやる。それでも校門が綺麗に装飾されていて、はじめての文化祭だし、とてもワクワクした。

笠松先輩はこのときの出し物とステージのローテーションで何度かライブをする。

私はよく見えそうなところをとっておいた。友達と合流して、間もなく開会式が始まる。

「なまえっち〜!」

昨日も聞いたその声。

『あ、黄瀬くん!』

おはよーと挨拶する。友達は少し照れた様子で髪をいじっていた。

「今日っスねー!笠松先輩!!」

『ね!すごく楽しみにしてたんだ!』

そう言うと、黄瀬くんが私の手を引いた。

「なら俺のクラスのところの方が見やすいっス!おいで!!」

何の気なしにやっているのかもしれないが、周りの女子の視線が痛い。しかし黄瀬くんはそれに気づかず、私の手を引いて人混みに紛れ込んだ。

「これから海常高校の文化祭をはじめます!」

文化祭実行委員の言葉で、体育館の中が熱気に包まれる。

「なまえっちどこかいくとこ決めてるんスか?」

『え?全然!』

「なら是非バスケ部に!執事喫茶やってるんで!」

『わぁ…黄瀬くん似合いそう!笠松先輩はちょっと照れちゃいそうだね』

「たしかに嫌がりそうっス」

黄瀬くんと話し笑っていると、徐々に挨拶から出し物系へとプログラムが変わっていく。

次かな、と胸を高鳴らして笠松先輩を待つ。

「次は!3年生でバンドをこの為だけに結成!」

私と黄瀬くんは顔を見合わせた。笠松先輩だ!

バンド名が発表されたあと、メンバーが出てくる。そして私たちの目の前には笠松先輩がいて。

『笠松先輩近いね!』

「勿論っスよ!笠松先輩に朝どっちに立つか聞いておいたんで」

黄瀬くんがウィンクした。音だしをする笠松先輩たち。今まで数日間、ずっと笠松先輩の演奏を聞いていたはずなのに、何故だろうか。胸の高鳴りがいつもよりずっとうるさい。

「どーもー!」

ボーカルの先輩がメンバー紹介を軽くして。

「じゃー!楽しんでください!」

その言葉と同時に、演奏が始まる。

笠松先輩、かっこいい。
私と好きだっていう話をしたバンドのTシャツを着て、今までももちろんかっこよかったのに、それ以上にかっこよくて。

学校皆が揺れていた。笠松先輩は楽しそうに演奏していて、そしてついに、一曲目が終わった。

「ありがとー!そして早いんだけど最後の曲!」

えー!とブーイングの声が体育館を埋める。

「生徒拘束の時間はこれだけだけどあとからのステージではもうちょいやるから是非来てね!よっしゃ、ラスト!」

そしてその曲は。あの始めて笠松先輩と会った日に弾いていた曲で。

歌が聞こえる。音が聞こえる。私の目に映る笠松先輩はすごくすごく、輝いていた。

「笠松先輩かっこいい!」

「ね!あんな風に笑うんだね!」

周りの女子の声が聞こえた。やっぱり、黄瀬くんがすごく人気なのかなと思ってたけど笠松先輩も人気なんだなぁ…。

笠松先輩のアレンジに会場から黄色い声。何だかもやっとしなくもない。

私が最初にこれに気づいたんだもの。

「…なまえ?」

黄瀬くんに呼ばれる。

『何?』

「いや、なんもないっス」

変な黄瀬くん。そう思ったが、私は笠松先輩たちをみる。最後の大サビを歌って、パフォーマンスは終了した。

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