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どうにか自分のクラスまで戻って、友達と合流した。笠松先輩ともう会えないなぁ…と考えれば、何だか涙が出そうだったので、考えないようにと必死だった。

そろそろ生徒拘束終わるね〜!どこいく〜!?と皆の声が聞こえる。バスケ部は絶対でしょ!という声に肩がピクリと震えた。行けない。笠松先輩には会えない。

「それではハメをはずしすぎず、十分に楽しむように!」

と教頭の声と共に体育館の入口が開く。そこに人が集まる。

「美味しいものとか食べようね!」

友達の声に私は目も見ずに、うんと返した。出来ることなら、笠松先輩のとこも行きたかったな、そう考えたとき。

「なまえ!」

腕を大きな手に掴まれた。周りの友達が驚いた顔をしているが、誰よりも驚いてるのは正直に言えば私だ。

「ゴメンね〜。なまえちょっと借りるね」

笠松先輩に腕を引っ張られている間に黄瀬くんのそんな声が聞こえた。きゃあ!と友達たちの黄色い声が聞こえた。でもそれ以上に私の意識は笠松先輩にしか向けられていなかった。

人がいなくなりつつある体育館の端につく。かなり人は少ない。

「…な、何でいなくなった?」

笠松先輩がそう言った。

『笠松先輩が、女子苦手だって知らなくて…。すみません。今までご迷惑お掛けしました』

頭を下げる。謝るしかないと思った。

「別に迷惑じゃねぇよ。それに別にお前のことは苦手じゃねぇ」

下げていた頭を上げると、笠松先輩は初めて会ったときのように顔が赤くなっていた。

『ほ、本当ですか!?』

「俺はお前と話したい」

笠松先輩が私の目を見て言った。ボンッと効果音をつけたくなるほど顔が赤くなった。掴まれてる腕からこの大きな大きな拍動を聞かれているんじゃないかと思うと、もっともっと大きくドキドキしてしまう。

『私も、笠松先輩ともっともっとお話したいです!』

「…そうか」

笠松先輩は安心したかのようにフゥと息を吐いた。さっきより緊迫した空気なんて全くないのに、まだドキドキは止まらない。

「悪いな。森山が変なこと言って」

『森山…?』

「俺が女子苦手とか言ったやつだ。でかいほうは小堀」

私は頭を動かしこっくりと頷く。

「しかも友達ともはぐれちまったよな」

先程まで騒がれていた黄瀬くんは森山先輩たちと一緒にいた。友達の姿はない。

「…一緒に回るか」

笠松先輩が私をみながら言った。私は先程まで友達と回る気満々だったのに、その言葉に大きく頷いた。

『はい!』

そう言うと、笠松先輩は笑ってよし、と言って黄瀬くんたちの方に歩き出した。

手は掴むのではなく、握られて。笠松先輩の大きな手が私の手を包み、私はその大きな手を握り返した。

森山ァ!と笠松先輩が森山先輩に怒る声が聞こえる。

先程までステージにいた大きな背中を見ながら私は笠松先輩の後ろをついていった。



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