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『すいません…わがまま言い過ぎました…』

たくさん曲のリクエストをしてしまったのは私だ。でも笠松先輩はいや、と言った。

「とりあえず一人で返すのも気が引けるし送ってく」

『え!?いいですよ!家近いんで!』

「家近いなら尚更送れるだろ。ホラ行くぞ」

笠松先輩はそこは折れる気がないらしく、私は素直に送ってもらうことにした。でも笠松先輩はバスケ部の部長さんだしもちろん先輩後輩問わず人気はある。誰かに見られていないことを祈るしかなかった。

「家どの辺なんだ?」

答えると、笠松先輩はふーん、と言った。

「なら別にたいした距離じゃねぇからな。気にすんなよ」

二人で夜道を歩いている。すると暗かった夜道だが少し明るくなってきて、子供の声なんかも聞こえる。

『何だか賑やかですね?』

「そうだな。あ、祭りやってんじゃねぇか」

笠松先輩が見ている方を見ると、確かにそこでは小さかったがお祭りは確かにやっていて。私も小さいとき来たことのあるお祭りだった。今日だったんだ、と思う。懐かしいな〜と思ってみていたら、それが笠松先輩の目にどのように映ったのかわからない。

「少し寄っていくか?」

そう言われた。

『笠松先輩がよかったら…』

「別にいい。祭りとか今年行く予定なかったからな」

笠松先輩の提案に私は甘えさせてもらうことにした。あの懐かしい頃とは少し変わってしまったお祭り。でもやっぱり懐かしくてこのお祭り独特の雰囲気が私は結構好きだった。

『昔ここのお祭りよく来たんです。お母さんに浴衣着せてもらって』

小さな子供が走り回る。水ヨーヨーで遊んだり、金魚すくいをしていたり。小さいお祭りだったけど、当時の私からしてみれば十分に魅力的だったのだ。

「…なんか食うか。腹減ったし」

『いいですね!何が良いですかね〜』

お店を見ればたくさんのものがあっていまいち選べない。

「かき氷食うか」

『お腹にたまりませんよ?』

「…暑いんだよ」

笠松先輩は、財布を出してかき氷屋に並んだ。

「何が良い?」

『え?自分で買いますよ!悪いですし!』

「いいから。何が好きなんだ?」

『え、じゃイチゴで…』

私のイチゴと笠松先輩の分のレモンを頼む。

「へい!いっちょ!彼女ちゃんの分な!」

かき氷屋さんのおじさんに言われる。

か、彼女…!!!

笠松先輩は私同様、顔を真っ赤にしてかき氷を私に手渡す。そして笠松先輩の分ももらって二人でベンチに腰掛けた。

『すみません。いただきます』

「おう」

二人の顔はまだ少し赤らんでいた。さっきのびっくりしすぎて否定できなかったんだけど、笠松先輩は困ってないだろうか。 笠松先輩に話しかけてみる。

『先程すみません。あまりにもびっくりしすぎて否定できませんでした』

「あ、いや、俺も出来なかったっていうか…」

その後に続く言葉はなかったが、また笠松先輩の顔に赤みが戻る。初めてあったときもこんな感じだったなぁ、なんてほんの数日前のことを思い出した。でも音楽の話するととても嬉しそうに笑ってくれたんだった。

『ごちそうさまでした』

二人でかき氷のごみを捨てて、また夜道を歩き出す。明るいところからまた暗い夜道へ戻ったが、夜は更けているはずなのに、不思議なことに暗いとは全く思わなかった。

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