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『え!も、もしよかったら弾いてください!』
笠松先輩はふっと笑って、弦を弾く。そうやって大好きなあの曲を笠松先輩が弾いてくれてる。
『いい曲ですよね、やっぱり』
「そうだな」
笠松先輩はそう言った。
『私、そのアーティストのちょっと曲風は変わるけどあれも好きなんです』
曲名が出てこないので少し歌ってみると、笠松先輩もわかる!と言ってくれた。
「あれもいいよなー。あまりあのバンドにしてはなかなかない感じなんだけど割とすぐ好きになった」
『それは弾けないんですか?』
「あーあれはアコギで弾かないといまいちよさがでねぇと思うなー」
笠松先輩の言葉に私はちょっと残念に思ったが、それでもだいぶ聞かせてもらってる。ギターを弾いているとき、笠松先輩は楽しそうなんだけどどこか安心したような表情をしているような気がした。
『ギター本当に好きなんですね』
「まぁバスケには勝てねぇけどバスケと同じくらい好きだからな」
笠松先輩はそう笑う。笠松先輩の演奏はもちろん上手で大好きなのだが、聞きに来るようになってもっと好きになった。それは笠松先輩の演奏は何よりも楽しそうだったからだ。表情は真剣なのだがその中に見える楽しんでいる様子。そこが私はとても好きだった。
『もし今度よかったらカラオケとかライブ行きましょう!』
何の気なしに軽い気持ちで言った言葉だった。それでも笠松先輩は顔を少し赤らめて頷いた。その事を当時の私はまだわかってなかったのだった。
「遅くなっちまったな…」
笠松先輩が言った。たしかに日はもう既に沈んでいて、空は闇に包まれている。
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