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ちょっと申し訳ないと思いながらも私は黄瀬くんに言われるがままについていく。そしてその教室の近くに来た。
「笠松先輩!ギター聞きに来たっスー!」
黄瀬くんがそう言うと同時に黄瀬くんに誰かが飛んできた。笠松先輩である。
「テメェ補習はどうした!?さっき別れたばっかだろうがぁ!」
怒りながら黄瀬くんを蹴っている笠松先輩。笠松先輩って怖い先輩だったんだ…と思っていたら黄瀬くんを蹴っているのをやめさせることもできず、ただ呆然としていた。
「痛いっスよー!笠松先輩!なまえ引いてるから!」
「なまえ…?」
笠松先輩の視線が私の方を向く。その瞬間にやべ、といった顔をした笠松先輩。
「昨日の…黄瀬と知り合いだったのか?」
『あ、すいません。実は今一緒に補習受けてて…』
「ああ…って!お前ら二人とも勉強しろ!俺の練習聞いてるどころじゃねぇだろうが!」
「いやーそれがもうわかるとこなくなっちゃって…!しかも先生俺らにプリント渡して最終日の回収まで放置なんスよー!」
黄瀬くんが言った。私もとりあえず頷く。
「それで?なんだって言うんだ?」
笑顔なのになんだか怖い笠松先輩。
「笠松先輩にわからないとこ教えてもらいたぁ!!!」
黄瀬くんが言い終わる前に笠松先輩の蹴りが入った。モデルなのにこんな扱いされちゃっていいのかな、なんて思った。
「範囲は?」
「せんぱぁい!」
黄瀬くんがプリントを笠松先輩に渡す。まさか見てもらえるとは。
でもプリントを見せたあと再び蹴りが入る。
「お前どこ埋めてんだよ!ほぼ白紙じゃねぇか!」
「わかんないんスよ〜!」
笠松先輩はったく、とため息をついた。
「なまえだっけか?お前もか?」
笠松先輩が言った。
『い、いいんですか!?』
まさか本当に私まで。
「別に一人も二人も変わんねーからな。見せてみろ」
私もプリントを笠松先輩に見せる。やっと落ち着いて机につき勉強が始まった。
笠松先輩は私にはさすがに怒らないでくれた。そして何より笠松先輩の教え方がとてもわかりやすいのだ。
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