side Hanamiya 見ててと言ってバケモノに飛び出していった名無しの花子とかいう女の背中を唖然と見つめていた 目の前では女と骸骨のような現実ではありえないバケモノが交戦しているという非現実的なことが起きているにも関わらず、女は怯えるようなそんな素振りを見せずにバケモノに真正面から向っている …いや、実際は怖くて堪らないのだろう さっき剣を俺にむけて振り抜いた時も、体育館での半ば尋問のような問いかけ時も バレないように手のひらに爪を立てて握りしめる手が震えていたのに気づかない訳がない それでも女は笑っていた どんなに疑われ蔑まれても怯える桃井や黄瀬を気遣ったり、今この場でも自分の身を危険に晒してもバケモノに向かって行ったり こんな意味のわからない世界で、見るからに怪しい存在のこの女を信じるメリットはほぼゼロだと思っていた じわじわと少しずつ、まわりから暴いてやろうと思っていた もし正体がバレて飛びかかってきてもすぐに切り捨てられるように剣を握りしめて しかし、とても人間地味たその言動に 怖さや不安を押し込めながらも戦おうとするその背中に 疑念が俺の中で首を擡げる コイツはほんとに巻き込まれただけの女なのか? すべて演技で俺達の懐に潜り込んで殺す気なのか? バケモノ相手に勇ましく剣を振るう女の背中を見つめながら、自分の中にヂリヂリとした焦燥を感じる この女勝手に飛び出しやがって… どーにかなんてどーすんだよバァカ…! 心の焦りや苛々を隠すことなく舌打ちに変え、女に向かっていくバケモノに目を向ける 先程からの攻撃もほとんど効果がないような、黒い塵のような実体のない体 しかし時折女の攻撃を避けるように動き回っている どこかおかしい、なぜ避ける?何か弱点が… 「弱点」という言葉が脳裏に過ぎった瞬間、目の前が真っ赤になった いや、正しくは俺の目が火を吹いたように熱くなった 「うぐっ…ぁああ…!」 「!!花宮くんっ?!」 俺の声に反応して名無しのが振り返る 確かに焦燥を感じていたが、本当に目が焼けているとは… こんな状況で痛みに蹲りながらも場違いなことをふと考えいると、女の後ろで今まで機械音のような音しか上げていなかった骸骨の口がゆっくりと開かれ、中から黒い塵とは違う毒々しい煙のようなものが溢れ出ているのを見た 何が正しいのかはまだわからない この女を信じるべきか、否か その答えが出る前に体は動き出していた side Hanamiya end _________ また一旦切ります。 next 29/34 back |