世界にさよならを | ナノ


「……以上、俺を含め16人です。名無しのさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫でーす、一応メモしたし!」

各学校ごとに自己紹介をしていき、最後に確6認するように赤司は花子に声をかける
元々知っているが、メモを取りながら先ほどの空気がなかったのように明るく振る舞う
正直、いつまでも、うじうじしてても仕方がないし

「次にこの状況についてだが、名無しのさんはここに来るまでの記憶が一部欠落しているらしい。皆はどうだ?」
「私達洛山は、レギュラーメンバーで自主練してたわ。永吉も小太郎もいたけど、外で走りこみしたり、筋トレしてたから一緒ではなかったけど…」

周りを見回す赤司と目を合わせた笠松が軽く頷き話し始める

「じゃあ、海常から。俺達は練習を終えて帰る途中、たまたま黄瀬が教室に忘れ物しやがって、それにつき合って教室に行ったんだ」

笠松は迷惑そうに眉をひそめて黄瀬を親指で指す

「あ、ひでーッス笠松先輩!ま。それで教室に入って机漁ってて、気づいたらもうここに居たッス」
「その時にいたのは2人だけですか?」
「いや、森山もいたんだが…」
「なるほど…わかりました」

次に海常のとなりにいた秀徳の3年宮地が話す 

「秀徳は俺、緑間、高尾が最後まで体育館で自主練してた。俺は流してシュートしてて特に変わったことはなかったが…」
「高尾も俺も特に異変は感じなかった。高尾は練習終わりのストレッチをしていて、俺はテーピングを直そうとしていたが…」

海常に続き、秀徳の宮地・緑間が学校での様子を話す。
緑間の顔は心なしか悪い気がするのは気のせいか…?
次に花子を挟むように座っていた桐皇・霧崎第一の順に話していく

「次はワシらやな。ワシは練習終わりに部室で明日の1・2年と3年試合のスタメン組んどった」
「私は今日の練習サボった青峰くんを社会資料室で見つけて、部室に戻るとこだったよ?」

同じ場所にいなくてもこの世界に飛ばされてる…?何か関連性があるのかな…

「俺達は今日はミーティングだけだったが、原のバカが忘れやがって…」
「花宮、んな怒んなよ〜」
「いや、お前行くつもりなかっただろうが。教室で女と遊んでいた原を俺が部室に連れてったところまでしか記憶していない」
「原、テメェ…!」
「あ、てかザキは?」
「ああ、アイツも部室いたけどいねぇな」

花宮に説教される紫の前髪の長い少年、原と、能面のような顔をした古橋を横目で盗み見る
キセキ獲得校だけでなく霧崎第一もか…
周りの反応をみると、まだ他校との蟠りはあるようだけど…てか、忘れられてるザキ…

「僕ら陽泉は大雪で練習が中止になってね。バスケ部員は駆りだされて学校周辺の雪かきをしていたんだ」
「俺は氷室と紫原と一緒に寮までの道の雪をかいてたぜ」
おおう、親近感。花子の生まれは東北だったため、実家の様子を思い出す
こっちはWC後で決定だな…私の世界は5月に入り、春から夏へと移り変わっていた
時間の流れも違うのか…?

「最後は俺達誠凛だな。俺と小金井は部活のあとたまたま黒子と火神に誘われてな」
「木吉先輩が渡米する前にと思って、4人でマジパへ行っていました」
「なるほど、ありがとうございました。謎なのは何故ここに、このメンバーが連れて来られたか、だが…」
「東京はともかく、秋田から京都までの高校の、しかもほとんど男を一斉に拉致するのは少人数ではほぼ無理に近いな」
「まして、皆簡単に拉致できるような奴らじゃない。アツシなんか拉致するのは至難の業だと思うよ」

赤司の言葉に古橋や氷室も自分の見解を述べる
「異世界に飛ばされた」なんて発想はなかなかしないよなぁ…

「それにあのバケモノ…決して人やロボットには見えなかったわ」
「外も気味の悪ぃ月しか見えない真っ暗闇…こんな場所現実でありえんのか?」
「学校の窓も開かないし、試しに椅子でブッ叩いてみたけどヒビ一つ入んなかったよん」

実渕も笠松も、来るまでに出会ったバケモノや外の様子に顔を歪め不安げに呟く
ちょ、流石原くん…けどやっぱり正規のルート以外の脱出ができないのはテンプレ通りだな…

「それにこのメンバーも謎だ。財閥の息子の赤司や女性の桃井・名無しのさんはわかるが、それ以外にこれだけの男を拉致する必要がどこにあるのだよ?」
「しかもほとんどがバスケ部関係…なにか意図があるのか…?」

確かにキセキ獲得校だけじゃないし、かといって無冠の五将も揃ってない…
赤司くんの言葉でまた自分に視線が集まった気がするけど……
赤司の言葉にみんな考えこみ静寂が場を支配する
その中で今まで声を上げなかった黒子が静かだがハッキリとした声で話し始める

「あの…名無しのさんの持ってた紙やアイテムが関係あるんじゃないですか?」
「どういうことだ、黒子?」

黒子くんの一言で自分の手にある剣に視線が集まる
く、黒子くん、視線が痛いよ…


「実は僕も持ってるんです。アイテムは教室を捜索しなかったので持ってないですが…」
「あ、それなら俺も持ってる!アイテムは体育館に来た人で持ってたやつのはまとめて入り口のとこに置いてるよ!」

黒子の言葉に隣にいた小金井も覚えがあったのか、閃いたように体育館入り口のところにあるアイテムを取りに行く
私だけじゃなく他の人もあるのか
なら私含め数人は所謂「役持ち」
バケモノと率先して戦わなくちゃいけない

花子は背筋に冷たい汗が落ちたのを感じた
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長いので一旦切ります
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