埃臭さと何処からか聞こえる軋むような音で、深い眠りから覚醒した まだ目は開かない 全身のだるさと頭に走る痛みのせいでなかなか起きられない 何処かに横たわったままで自分の状況を考える 自分の横たわっている場所はお世辞にも心地よくはなく、手で触れると砂のような埃のようなザラつきを感じる床であるとわかる 花子は先程よりも治まってきた頭痛を和らげるように片手でこめかみを揉みながらゆっくりと、目を開いた 何も見えない……自分の部屋、ではないよね… 昨日は飲み過ぎたわけじゃないし、あれ?昨日は何してたっけ?仕事…休み、………っ?! 呑気に横たわりながら考えていた花子は、今の状況の異常さにやっと気づいた しばらく時間が立ち慣れてきた目には見覚えのある場所、ましてや自分の部屋などではなく、見たことのない風景が見え、慌てて体を起こす 花子の目には乱雑に並べられた机とイス、その向こうには学校にあるような大きな黒板が壁に据えられている 慌てて振り返ると、ボックスのようなロッカーと掃除用具が見えた そのどれもが新しいものではなく、どこかひしゃげていたり、ささくれていたりと古さと気味の悪さを感じるものとなっている 自分のいる場所を把握し、昨日の記憶も思い出せずにいる夏葵の脳裏に嫌な言葉が浮かぶ 目を覚ませば見たことのない廃校のような場所、記憶がない、そして… 背筋に嫌な汗が流れ落ちる感覚を感じながら夏葵はヨロヨロと立ち上がり、教室のような場所の窓のそばに近づく そして、息を呑む 目の前には校舎から見下ろした風景ではなく、何も見えない闇 その闇に浮かぶ視界を覆うほどの大きな、真っ赤な月が映る 「ははっ…マジか」 茶化すように笑うが、乾いた音が唇からこぼれ落ちる 脳裏に響くのは、想像していた中で最悪の単語 異世界 ホラーゲーム (ここは異世界)(私を殺す世界) prev next 4/34 back |