カウンセリング | ナノ


4続・治療(五回目)

「……――あやね、君は、……俺よりこの男を選ぶつもりなのか?」
「……っえ……」
「どうなんだ答えろ……!」

榛名さんの迫力に思わずおののいた。
後ろ、振り向いて千葉先生を見ると彼は彼で私の返事を待つようだ、興味津々といった様子でこっちを見ている。
答えにつまり、悩んで、……しかし返事をしようと口を開いた。
そこで止まっていた先生の動きが再開され、あられもない声が出た。

「っあ!あぁっ、はぁ……っ!きゃぁ……っ!!」
「!おい、返事、しないつもりか!」
『この声聞けばわかるだろう。感じすぎておかしくなるって声だ。これが返事なんじゃないかな』

目の前の榛名さんの体に抱きついて、ガンガン揺すられるピストンに耐える!彼は両手を宙で遊ばせる、どうしたらいいかわからないようだ。
私はぎゅううと抱きついたまま、はしたなくもイッてしまった。

「っん!ん……っひぅ、はぁ、……う……っぁ……ああ……」
「はぁ……はあ、あやね、君は、」
「はっ、ふぅ、ひぅ、はぁ……っ」
「気持ちよくしてくれたら誰でもいいのか……!?」

榛名さんは怒っている。しかし、その中に性的興奮が見えた。私の倒錯が彼に快感を付与するようだ。
ガシッと持たれた両肩が、力の入った彼の指先のに圧迫される。体から引き離されて彼と対面する形だ。ばちっと目が合う、そのタイミングで先生は再奥まで性器を押し込んでどくどくと精液をそそぎこんだ!

「あっ!ぁ……、あぁ、ナカ、ナカにたくさん、出て……っ!」
「…………!!!!」

気持ち良さにぶるぶる震える私の体の痙攣を、手のひらで直に感じただろう榛名さんは見たこともない表情でこちらを見下ろした。
もっと快楽を得ようとよじってしまう思わず腰つきがはしたない。
……おかしなことに彼の憤怒と侮蔑的なまなざしに、全身がゾクゾクする!

「(た、大変だ……!私は変だ!榛名さんが怒るほど私に感情を抱いてくれるのが嬉しいってことなのかな……!?きっとそうだ!)」

だってずっと彼はただ優しいばかり、特に行為に及ぶ時はこちらを気遣うばかりで、感情が見えない人だった!それがこんなに怒気を強め、性欲に染まっているなんて!

「あやね……、俺を見てくれ。何か言ってくれ」
「好きです……キスしたい……榛名さん……!」
「……な……」

私が求めると、いきなり思いきり深いキスをされて苦しい!口付けたまま片足を抱えられ、ちょうど先生のものが抜かれどろどろの精液をだらだらと落とす入り口に、榛名さんのが代わりに収まる!さっきまで入っていたものに形が変わったナカがまた違った形に拡げられる。両足が浮いて持ち上げられる格好となったら、いつもよりずっと激しく腰を打ち付けられた!

「っぷぁ、……っは、はあっ!うう……、(榛名さんの、いつもより、大っきい……!!)」
「……っぐ、……な、生……っヤバイな……!」
「っ!つぅ……っ(……こ、こんな、興奮してくれていた?なんて……!!)」
「くそ、信じられんくらい、狭い…………!な、なんか、これは、子宮、中にまで、入っ……」
「はぁ……っぁっ……!んん……!!(今更だけど本当に榛名さんは、私が誰かにネトラレるってことに、興奮するんだ!!)」
「て……!る……みた……、…………っく……!!」

榛名さんの言葉が途切れ曖昧になっていく。いつもはきはきしている彼がうわ言を呟く、何か言っているがわからない。入れてすぐだがもう我慢ならないらしく、私をぎゅううと抱きしめたと思ったら、出し入れのスピードがどんどん早くなった。ナカの榛名さんのがより一層膨らんで、ガクガク体を震わせたと思ったら、ビクンビクンと性器がしなる、ナカにたくさん出している!普段の彼を知っている分、こんなに何度も出せるのかって驚くほどだ!
生でナカで出されるのは、癖になりそうなほど、気持ち良すぎて、私までまた……!

「んっ……!ぁ…………っ、は…………、はぁっ」
「ぐ……、っぅ、……あぁ、どうなって、なか、……!!」
「あ、……、ん……!!」

再奥まで埋まっているのにもっと奥に行きたがって榛名さんがぐいぐい腰を押し付けた。

『スゴイ、動物みたいだね。ピル飲んでてもデキそうな気迫だ』

イッてクールダウンのはずが、だらっと力が抜けた体がずっと気持ちいい。本能に染まったような理性の乏しさで、動物のようだと言われその通りだと思った。

「ほら、みろ、……っ千葉!あやねは俺が好きなんだよ」
『それは残念。負けるなんて意外だね。君たちわりと愛が深いね……。けれどまあ、それも今はの話だよ、だって』
「っんぁ…….あっ……はぁっ……はあぅ……――!!」
「!っあやね……!」
『すぐにどっちと愛しあうのが彼女の体にとって得か、わかってくるさ』

二人きりの治療のお陰で事実榛名さん以上に先生は私の性感帯を熟知していた。榛名さんは私を抱き寄せながら先生を睨んだ。
私は疲労困憊でふらふらの体を持て余してしまい、彼らにくったり体を預けざるを得なかった。





妻が院内のシャワールームに消えてから長い。
榛名は頭を抱えていた。毎度カウンセリングのあとはこうだった。罪悪感が心の中を占めて胸が悪い。
あからさまな落ち込みを横目に千葉はいたって普段通りだ。

『ああほんと、榛名ときたら難儀な性癖を持ったものだね。妻を人に差し出して征服されるのに興奮するくせに、それでいて自分をずっと愛して貰いたいなんて。……どっちかしか選べないとわかっているくせにね』
「……普遍的な、……よくある性癖だとお前言ったろう」
『よくあるよ。みんな一様に難儀なだけでね』
「…………」

にやにやしながらコーヒーを飲む旧友に目もくれず榛名はふてくされている。

『榛名の倒錯の原因をいろいろ考えてみたのだけど、君の場合に限ってはきっとアレだね。試してるんだ』
「試すって、何を」
『どんな状況に陥ってもパートナーに愛されたい。だからわざと試練を与え、彼女の愛を試してるってことだ』
「バカバカしい…」
『そうだね。でも試さずいられない。向こうが根を上げるまで際限なく甘えるんだろう。捨てられたら相手はその程度の愛情しかなかったんだと悲しむ。壊したのは自分だけどね』
「……言ってろ」
『ふふ。…………優しい妻にしたのは間違いだったね』
「お前と、話しているとイライラするんだよ。やっぱりカウンセリングなんてくるんじゃなかった」
『……、カウセリングなんて来る性格じゃないのにねえ。来たのは……ふふ、愛が君を少し変えたのかな」

ここで千葉の携帯が光った。誰かからの呼び出しだ。彼は部屋を出なければいけないようだ。

『来月も来た方がいいよ。これ以上おかしなことになる前にね』
「お前がもう十分おかしくしてるじゃないか!?」
『プレーはプレー。治療の一環だよすべて。それ以外の意図はないね』
「治療で中出しするのか」
『必要だからやったまでだ。君抜きで彼女とするのもね。……治療の必要がなくなればやらないよ。どれもこれも榛名の興奮を煽るための仕掛けだ』
「……ば、馬鹿なこと……!ふざけるなよ……」
『事実、求めていたプレーだったろう』

返事ができない!図星だからだ。
こうして毎度もう来ないと思いながらも、しばらくしたらカウンセリングを利用する榛名が居た。それにしても今日の内容はヒドイ……、みるみる開かずの扉が開いて行く。
千葉が出て行ってもなかなか戻らない妻に想いを馳せる。アイツは病院からの呼び出しと言ったがもしかしてシャワールームで会っているのでは?妙な心配、いや妄想がとめどなく考えられ、胸がざわざわした。
目の前のコーヒーをグイッと飲んで、邪念を拭う。頭を冷やしたくてとにかく早くシャワールームに行きたかった。





帰りの車の中、助手席で私は疲れ切って眠っていた。
病院に完備されていたシャワーを使わせてもらったが、普段使わない筋肉を使ってすでに全身が筋肉痛だ。今日はいつもよりずっとずっとハードだった。
段差でがたんと揺れた車の振動ではっと目が覚めた。うっすら開けた目の中に街中のネオンが入っては流れていく。私が起きたことに気がついた榛名さんがこちらを見ずに口を開いた。

「体、大丈夫か」

どう返事をしようものか考えあぐねた。正直なところ、疲れで声を出すのもしんどいのだ。そんな私をくんでかはわからないが、榛名さんは私をちらりと一瞥して、申し訳なさそうな顔で前を向く。無表情な私が珍しいのだろう、とびきり深刻な面持ちだ。

「いろいろ……すまない。まさかこんなことになるとは思ってなかった。君を俺のねじ曲がった趣味に巻き込むつもりはなかったんだ。本当に」

すう、はあ、彼は深く呼吸をして、ギクシャクした空気がさらに重く緊張する。

「これから言うことはあまりに都合のよすぎることだと自分でもわかってる。けれど、聞いてほしい」

私はじっと彼を見た。けれど榛名さんは前を向いたまま言葉を続ける。

「……俺を好きでいてくれ、頼む……」

今までずっと隙を見せなかった愛しい人の秘密を知り、先行き不安だった結婚生活に彼を繋ぎ止める理由ができたと思った。
安心が私を満たして、返事をする前にまた眠ってしまった。


end


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