セーショリブ | ナノ




1

 

「性処理係を作ることにしました!」

部長の話は長く、また突拍子が無い為、いつも大体スルーされる傾向にあった。
ただ今回だけはどよめきがオフィスを支配した。
十五人程で構成されたこのチームの誰しもが、忙しすぎて部長とうとうおかしくなったんだと思った。




*理想の職場





「僕外回りに行ってきます!」
「今日の性当番お前だぞ」
「えっ」
「なんだ忘れてたのか。はやく部屋に行かないと部長にどやされるぞ」
「なんと…それは参りました…」

性処理部が出来て、最初は浮き足立っていた皆も直ぐに慣れてしまった。
どう考えてもおかしな話だが今となってはごくごく当たり前みたいに存在している。
僕はそれがどうも受け入れられず『へや』に入ったことがない。
…今までは。


そこは倉庫だった一室をプレイルームに改造したものだった。
ピンクがかった薄暗い照明に心がざわざわと揺れた。
アロマキャンドルの臭いがきつくて、頭がくらくらする。
僕はもうずっと気が引けていた。
…どうか今日一日、誰も来なければいいのに。


「岳くん、やってる?」
「梓さん」

早速来客があった。
この背の低い女性は先輩の梓さんはとても頭の良い人で、自分の足で動かなければ満足に仕事をこなせない僕とは大違いだった。
そんな理由で僕はこの人を尊敬している。

「見ての通り、誰もまだ来ていません。僕、人気ないのかもしれませんね」
「そうかな?」
「えぇ…だって昨日は大盛況だったんでしょう?やはり滝川さんはすごい」
「滝川くんは絶倫だからねしかたないね」
「…はぁ」

梓さんのその小柄な体型がマニアには堪らないとあの滝川さんが言っていた事がある。
そのくせうちの課のブレーンなもんだから、ギャップがいいってあの滝川さんも誉めていた。
一言で言うなればロリキョニュウって言うらしい。
僕はまだ勉強不足でその意味は解りかねるが…。

「それで梓さん、どうしたんですか?」
「わ、私がお客さんだって選択肢は岳くんにはないのかな?」
「え…」

滝川さんが猥談を始めるとすぐどこかに飛んでいく梓さんが自ら客だと言う。
僕は目が点になった。

「岳くん?」
「あの、自慢じゃないですがその、僕はわりと体が大きく筋肉質な方でして」
「うん」
「梓さんとの身長差は実に40センチの大台に乗るレベルですので…」
「うん」
「その、…つまりそのような行為を行えば梓さん死んじゃうんじゃないですか?」
「し、失礼だぞ!」
「すみません…」
「岳くんはテレビみないのかな?」
「テレビ、ですか。僕はあまり…」
「あのアイドルだってあのアナウンサーだって小柄だけど力士や野球選手とけっこんしています!」
「はぁ…」
「大丈夫大丈夫」
「えぇーそうですか…?」
「あ、もしかして部長の作った冊子読んでないの?」
「冊子?え、あ、あぁ、気がつかなかったです。なになに…」
「じっさいにせっくすするわけじゃないんだよ」
「え!そうなんですか」

その言葉に少しほっとする。
緊張がほんのちょっと、緩和された気がした。
部長が手作りしたこの『性処理のススメ』って本にはこれからのハウツーが丁寧にかかれていた。

「まぁ最終的にはだいたいしちゃうらしいけど」
「え!どっちなんですか」
「たぶん、岳くん次第なんじゃないかな?じゃあ頼むよ岳くん!」
「でも僕…自信がありません」
「そうやってネガティブなの悪い癖だよ」

梓さんを見るとすでにジャケットを脱いで俯せにベッドに横たわっていた。

「はやくー」
「あ、はい」

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