赤い実はじけた


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「はぁー……要するに、君がとてつもなく非常識な存在だということは理解した。その夢の世界とやらの知識は興味深いものがある。私としては、むしろ本よりそちらでの知識と経験がこの地に、君という人格がその器に、必要であり有用とされたのではないかと思う。実際、君は本作りに付随する形であっても既に様々なものを生み出して広めている。それを守るために、領主の弟である私が伴侶に選ばれたというのも……納得できない話ではない。神々の意思は分からぬが、君のその暴走しがちな突飛な行動は、並みの者では制御も理解もできまい」
 はぁー、と深い溜め息をつく神官長。随分とお疲れのようである。
「そんなに嫌そうにしないでくださいよ……これでも前世では成人済の学生でした。こちらの常識さえ分かれば、そこまでご迷惑をかけることにはならないと思いますが」
「君が? その粗忽さで成人していただと……?」
「世界が変われば常識も変わります。あちらではコレくらいが普通でした!」
「信じられぬな……どれだけ平和で呑気な世界なのだ」
「確かにかなり恵まれた環境でしたね。不便なことなんて何一つないと言ってもいいくらい……色んなものを与えられているのが当たり前で、そんな幸せに気付くことなく、無邪気でいられたんです」
「……いくつで亡くなったのだ?」
「あちらでは二十二歳まで生きました。マインとして生きた時間と合わせると、今は二十四歳くらいの感覚ですね」
「…………あり得ぬ」
「いや、そんなことを言われても……そういえば神官長はおいくつですか?」
「…………」
「……神官長?」
「……――――だ」
「はい?」
「……次の春で二十一になると言っている」
「まさかの年下……!」
「現状は君のほうが遥かに年下だ。そのなりで私を年下などと呼ばぬように」
 顔を背けて忠告する神官長は、どこか拗ねているように見えた。
(納得いかないよね……分かるわかる。わたしも神官長は若くてもわたしと同じくらいか、ちょっと年上くらいだろうと思ってたもん。三十代くらいかな?とか思ってた頃もある。けど最近は少し顔色が良くなってきて、思ったより若かったのかと思い始めてたんだけど――そっか、まだ二十歳だったのかぁ……ビックリだよ。でも言われてみれば見えなくもなく……美人さんだから年齢不詳だったのか)
 それなのに過労気味で、普段から食事も疎かにしてたりするから実年齢以上に老けて見えるのだ。もっと健康的に生活してもらわないと!
 いくら若いからって無茶しすぎだよもう!
 神官長のバカバカ!

 わたしは、やはり神官長の生活習慣の改善は必須だと再認識をしたのだった。

2023/04/02



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