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今でも信じがたい現実、夢だと思っている。

……が、本当にあれは夢と言えるのだろうか?



ことの発端は……あれ?あれは、何時の話だ?……あ、放課後の、帰りか……。
とぼとぼと何時も通りの時間帯で何時も通りの下校路に何時も通りの歩く速度で何時も通りの思考回路と視界世界と聴覚機能。まあ、かっこよく言っているが、簡単に言えばボヤッと上の空な感じで歩いていたと言ったところだ。

「おい!そこの兄ちゃんや、何ボサッと歩いてるんや!はっはーん。ボサッと歩いているうちに誤って電柱に当たって爆笑を取る寸法か?なかなかに古典でオーソドックスで簡単なボケをかますんやな……。」

そんな何時も通りの行動中に放たれた声。いきなりであったのとボヤッと歩いていたのもあり、気づくのが数秒経ってからのことだった。

「何、初対面の人間に馬鹿な質問しているダニ!ってか、兄ちゃんも目の前にこうして可愛らしい生き物がいるのにぼーっと歩いているのも失敬ダニ!」

何処からか声がする。何処から?わあわあぎゃあぎゃあと叫んでいる。
しかも、古典でオーソドックスで簡単なボケって……ボケてはいたけどボケはやってないよ!と何故か心で返している自分がいたが、そんなことより何処で声がするか辿ってみた。

「お前ら、何話をややこしくしてんだ!はあ……おい、そこの明人って人間。そろそろ天然ボケはいいから気付け!」

はっと声のするところ……根元、発信音がする場所が解った気がした。ここまでに数十秒かかった。

そして、焦点を合わす。

「わあ!え?な、猫?兎?……ろ、ロボット?」

俺の目の前、やや視界の下。その発している声の正体。

「何だ?之木、わいに文句か?ああ?」

黄色の関西弁を話す猫。

「そうダニ!何いちゃもんつけるダニ!」

青色のナルシスト発言の多い兎。

「うっせぇ!さっさと用事済ませたいんだよ!馬鹿共!」

緑色の昔風造りの俺様口調のロボット。

視界左から猫に兎にロボットが口々にに話している光景がそこにあった。あり得ない光景。世の中あってはならない光景がそこに現れていてちゃんと描(ソンザイサ)かれていた。

「……。」

困惑と困厄と困苦が混沌と渦巻き、今にも逃げ出したい気分だったが、それと同時に興味と好奇心と確認が脳内に渦巻き、そちらが勝ってしまい、自然と身体は彼らの目線を合わせていた。

「……ほ、本当に喋ってる?」

「はあ?何や兄ちゃん?まだ疑ってんのか?はあ……恐ろしい兄ちゃんやな。本間。」

「やっさん!こうなったら、しばけダニ!」

「お前ら!いい加減に……って、何すんだよ!」

気付けば三匹?(二匹と一体)の内の一体を持ち上げまじまじと見上げる自分がいた。

「はあ……最近のロボットは精巧に精密に繊細に造られているんだな……凄い!」

「何言ってんだよ?馬鹿か?おい!降ろせ!この天然鈍感男!」

ガツン!

「痛っ!」

もがきもがいて離れようとするロボット、嫌、之木と呼ばれたロボットは頭真ん中に鉄拳を喰らわせてきた。自動的と言えば自動的な感じで痛さで掴んでいた手を離す羽目になり、するりと抜ける之木、さん。

「兄ちゃん、精巧にに精密に繊細に造られたロボットがそんな口調で話すか?それじゃあ、わいらはどうやって説明する気ぃや?ちゃんとしたしっかり納得できる理由を述べてみぃ!」

「そうダニ。特に、この兎の愛らしゅうぬいぐるみのチェーロ様の説明もきっちり理解できる理由を述べろダニ!」

下からはやいやい野次を飛ばす二匹……。

「……え?ぬ、ぬいぐるみ?」

「そうダニ!……ん?解ってなかったダニか?おぉ……これはこれで本物に見えてる証拠ダニ。えっへんダニ!」

「ちゃうわ!チェーロ!本物に見えてるちゃうわ!この天然鈍感兄ちゃんやから解らんだけやって、チェーロの実力でやり遂げたもんやないわ!」

「ああっ!もう、話が全く進まねーっ!!!」

改めて驚いた。動物だと思っていた兎は実はぬいぐるみだった。嘘だと思ったがよくよく見ると本物には見えなかった。

「えっと……その、そうだと……兎さん……基、ぬいぐるみさんだとロボットと同じ説明になります、よ?」

「ぬあっ!そこのロボットと同じ説明ダニ?何ぬかしやがっているダニ!訴えてやるダニ!覚悟しろ、ダニ!」

「もう、時間の無駄だっつうの!」

「で、わいはどう説明すんや?兄ちゃん?」
 
 
 


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