◇Horcruxes
※分霊箱実体化同居設定で、ヴォル(教師)×ハリ♀(生徒)。設定は日記にあります。

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家に帰れば、やっとのことで手に入れた愛らしい婚約者が、ぱたぱたと出迎えてくれる。キスをすれば、彼女は恥じらいながらもそれを受け入れ、そして二人でリビングへ向かうと、温かい手料理が待っている。他愛ない出来事を話しながら食事を終えた後はゆっくりシャワーを浴びて、ベッドで待つ彼女を抱き寄せ、それから―(自主規制)。

とにかく、そんな甘い生活が待っているはずなのだ。それなのに。

「・・・これは一体、どういうことだ」

ヴォルデモートは広い居間の前に立ち尽くしていた。

*

「ちょっと!このスープ、味付けが雑過ぎるんだけど?」
「ご、ごめんなさい!次は気を付けるから・・・」
「リドルは言い過ぎです。彼女は十分よくやってくれていますよ?私は美味しいと思います。そうですよね、トム?」
「・・・うむ」
「・・・二人とも、ありがとう」

ハリーが嬉しそうに微笑むと、ヘルガはどこからともなく花束を取り出した。リドルは不機嫌そうにそっぽを向いている。

「貴女のような可憐な方には、やはり笑顔が一番似合います。―お花をどうぞ、ハリー」「わ、ありがとうヘルガ・・・えっと、花瓶はどこだっけ・・・あっ、ヴォル!お帰りなさい!」

ようやくハリーがヴォルデモートの存在に気付いた。花束を一旦脇に置くと、すぐに駆け寄って来る。

「今日もお疲れさま。ご飯出来てるから、座ってて」
「・・・ああ」

言いながらヴォルデモートのコートを手際良く脱がせ、受け取る。そんな良くできた嫁(予定)の姿に、ヴォルデモートは胸が温かくなるのを感じた。一つ残念なことと言えば、お帰りのキスの前に彼女がコートを置きに行ってしまったことだろうか。・・・いや、それはこれから徐々に慣らしていけばいい、ヴォルがそんなことを考え始めた時だった。バスルームの辺りから、ハリーの悲鳴が聞こえた。―今度は何だ!ヴォルはこめかみを押さえながら声のした方に向かうと、金のロケットを首から下げた男が、ちょうどバスルームから出て来たところだった。ハリーは顔を真っ赤にして固まっている。

「おいハリー、バスタオルが出ていないぞ?全く、嫁失格だな・・・」

「っ〜〜〜〜!ザラ、あの、お願いだから服をっ」

「何を今更。男の裸など本体で見慣れているだろう?・・・あぁ、それとも何か気になることでも?何なら本体殿の身体とどこが、どう違うのか、触って確かめ―へぶっ!」

「とっとと失せろこの露出魔!」

ヴォルデモートは床を這っていたシマヘビの尾を引っつかむと、思いっ切り叩きつけるようにして投げた。ビタンと生々しい音を立ててザラの裸体に命中する。(途端に背中に縋り付いて来たハリーはよしよし、と撫でてやった)。

「何をする本体。痛いだろう」
「いいから服を着ろ!」
「チッ。煩い奴だな」

一連の流れを淡々と見ていたナギニは、くったりしたシマヘビを拾い上げ、呆れたように溜息をついた。

『・・・虐待、ダメ、絶対』


―溜息をつきたいのはこっちだ!ヴォルデモートの心の叫びは、誰にも届くことは無かった。


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