風恋
6話
それなのに、その当の本人から思いがけず告白されて。
死ぬほど驚いたものの、それは泣きたくなるような仄かな幸せを、雨竜の心へと届けてくれた。
ーーーーーーけれど。
相手の存在を受け入れるには、自分はあまりにも矜持が高く臆病者だ。
全ての虚像を削ぎ落とした後に残るのは、孤独に蓋をして弱さを隠そうとする女々しい自分だ。
思い出されるのは、昔の自分。
小学校に上がる頃には、すでに自分と父親との間には、どうしても埋められない溝が出来上がってしまっていて。
もっとも身近な存在である親に、甘える事が許されなかった。
だから、まだ幼い心が抱える孤独や弱さを、ぎゅっと唇を噛み締めて、ただ耐えるしかなかった。
無力な子供でしかなかったから。
そんな雨竜を我が事のように心配し、手を差し伸べてくれたのが祖父だった。
正統な滅却師としての資質と、揺るぎない信念を貫く強い意志を持った、偉大なる先達。
けれど、その人となりは、穏やかで優しく、深い慈しみの心を持った人だった。
感情を押し殺して生きていた幼い雨竜を理解し、その優しさと厳しさで導いてくれた。
孤独しかなかった人生に、滅却師を継ぐ夢を与えてくれて、その夢を一緒に育ててくれたのだ。
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