憂愁の恋
9話
「石田、俺はただ………」
全てを拒絶するかのような、冷たい反応。
払拭不可能な気まずい雰囲気が、二人の間に漂う。
こんな言葉を聞きたくて、雨竜を探していた訳じゃないのに。
否定ばかりを口にする恋人。
けれど一護は、根拠のない直感ではあるけれども、このまま彼の言葉を鵜呑みにしてこの恋を諦めてしまえば、何故だか余計に雨竜を傷つける結果になってしまいそうな……そんな気がした。
だから―――――諦め切れない。
そう、自分は石田雨竜が好きなのだから。
雨竜の、感情の読めない瞳が好きだった。
その複雑で難解な性格も。
頑固な所も、意地っ張りな所も、素直じゃない所も、潔癖でプライドが高い所も。
本当は、繊細で優しい所も。
何もかもが。
「石田」
「もう、離し――――」
「嫌だ」
「黒崎………!」
嫌がって身動ぎした雨竜の身体を、逆に一護の力強い腕が引寄せようと動いた。
反射的に顔を上げれば、近づく琥珀の瞳。
声が喉の奥で空回りする。
逃げる事も出来ず、ただ呆然と相手の熱を受け入れていた。
目を見開き、身体を強張らせたままの雨竜に、一護はもう一度、不器用にただ押しつけるだけの口付けをして、それから酷く辛そうに彼の事をかき抱いた。
それは子供がするように随分とぎこちないものではあったが、不思議と抵抗する事は出来なかった。
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