憂愁の恋
1話
2009.07.10start
☆まえがき★
原作ベース。
憂愁とは、心配して悲しむこと。
好きなのに一護から離れようとする雨竜の、心配して悲しむばかりの恋とは……。
一護の誕生日ネタ。
誕生日の約束をすっぽかして行方をくらましてみようと思ったのは、一護の言葉がきっかけだった。
「たまには恋人らしく振る舞えよ」
そんな事を言い出したのは、恋人らしさがまるきりない雨竜への当て付けだったのかもしれない。
「どこに誘っても嫌々って顔するし、ちょっと人前で馴れ馴れしくしたぐれぇで怒るし…。俺達が恋人同士だって分かってんのか?」
「それとこれとは関係ないだろう」
「好きだ、つったらお前も頷いたじゃねぇかよ……。あー、ワケ分かんねぇ…」
脱力を滲ませた溜息。
呆れ返ったように、そのくせどこか不器用な恋人に対して仕方ないと諦めているかのような彼の態度は、酷く雨竜の中の苛立ちを煽ってくれるもので、二人の間の空気は一気に険悪なものへと変化した。
確かに、彼の言う事も少しは理解出来る。
恋人同士、という言葉が当てはまるのかどうかは疑問だが、彼に密かに惹かれていたのは本当だし、思いがけず告白されて頷いたのは事実なのだし、全くの嘘という訳でもない。
好きになったきっかけは、己に無いものを求める、純粋な憧れだったのかもしれない。
ただ、手放しで彼に傾斜する事が、どうしても雨竜には憚られるのだ。
雨竜にとって、それは恐怖でしかないから。
一護に会うまでは知らなかった、孤独という事の本当の意味。
その寂しさ。
そういった諸々の感情を、雨竜は未だに上手く処理出来ていない。
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