短編ログ | ナノ
迷惑だと言いながら

「ごーーくーーちゃん!」

「ぬわあっ! お前〜〜ッ!!
 その呼び方止めろって何回言ったらわかんだよ!」

「呼び方ぐらい、別にいいじゃないですかぁー
 私と獄ちゃんの仲じゃないですかぁー 私たち、幼馴染なんですよ!

 ほらほら、獄ちゃんだって、私のこと
 昔みたいに"名前ちゃん"って呼んでくれて構いませんよ?

 ってか、むしろ"名前ちゃん"呼び大歓迎なんですけど…」

「チッ、俺はお前のことはそんな風にはゼッテェ呼ばねえからな!」

「そんなぁ! 酷いですよ、獄ちゃん。
 怒っちゃいました?…やっぱり隼人ちゃんの方が良かったですか!?」


この女は俺の……いわゆる幼馴染ってヤツだ。
こう見えても俺は……この女のことが、す…好きだったりする。

多分、コイツには俺の気持ちは気付かれてねぇはずだ。
まぁ…好きだなんて、コイツには絶対言う気はないけどな。


「はぁ……昔はもっと、素直で可愛かったのに…
 私のこと…今みたいに"お前"なんて呼ばすに、"名前ちゃん"って呼んでくれてたのに…」

「チッ…悪かったな、今の俺は可愛くなくて!」

「もう! 舌打ちなんかして、獄ちゃんは。」

「だから、その呼び方止めろ!」

「止めません。 獄ちゃんはいつになっても獄ちゃんなんです!」

「はぁ?? 訳わかんねぇーこと言ってんじゃねぇよ。」

「訳わかんねぇーことじゃないです。 訳、分かります!」

「チッ」


昔からそうだった。
コイツは…俺の幼馴染は、妙なところにこだわるヤツだった。

ほらな…今みたいに、自分が思ってることを否定された時にとる態度。
左手を上にして腕を組みながら、プクッと頬を膨らませてる。


「あ!また舌打ちしました! …獄ちゃんは、私のこと嫌いなんですか?」

「お前のことなんて…嫌いだよ!」


そんな、訳、ない。
嫌いだなんて、うそで……本当は、本当は大好き。


「酷いです! 私はこんなにも獄ちゃんのことが好きなのにぃー」


いちいち期待させる様な言葉を言いやがって、と思いながらも
心の中では大喜びしている自分と、必死ににやける顔を堪えてる自分がいた。


「う、うるせぇ 名前! 迷惑だっ、この野郎!!」


まだ、コイツには俺の気持ちは気付かれてねぇはずだ、よな?
…好きだなんて、コイツには絶対言う気はない……言える訳がねぇだろ。


end

20100905
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初々しい獄寺くん(´∀`*)

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