短編ログ | ナノ
部屋の隅に妖怪二人

今は夜。
桜の花びらの舞う縁側に腰掛け 茶を飲んでいるこの少女はリクオの幼馴染である。

彼女は人間であるが、妖怪を恐がったりはしない。名前を名前と言う。

なぜ彼女が、こんなにも遅い時間までリクオの家の縁側に腰掛け、ゆっくりと茶を飲んでいるのかと言うと…今は夏休みでついさっきまでリクオと宿題をやっていたのだ。もちろん、昼の姿のリクオと…


▼▼▼


よぉ、首無。
最近、アイツと仲良いみたいだな。アイツ…名前に惚れたかい?


何をおっしゃいますか、リクオ様。
と言いますか、夜のお姿になられていたのですね。


おうよ。んで…首無はアイツに惚れてるのかい?


リクオ様の方こそ…名前様のことを気にかけている様ですか?


お…自分のことははぐらかすんだな…


そ、そんな訳ではありませんよ。
私は………っそういうリクオ様はどうなんですか?


オレかい?オレはだなぁ―――…



「ねぇ…さっきから二人でこそこそ何話してるの?
 部屋の隅に男…妖怪二人って不気味なんだけど?」


「すみません、名前様…」

「わりぃ…名前。ちょいと、首無と話があってな…」


「ふぅーん…話ねぇ。 …何の話?」


▼▼▼


おい、首無。
お前の所為で話題がとんでもない方向にいっちまったぞ…どうすんだよ…。


な!…私の所為だと言うんですか!?
どちらかと言うと、名前様はリクオ様のおっしゃった言葉に興味を引かれたのですよ。


………そうかい?


ほら、そのびみょうな間!


「…まぁ、無理にとは聞かないけどさぁ。それにリクオ…あんたいつからその姿になってたの?」
「あぁー…ついさっきからだな。」

「なによ、その曖昧な答えは……あ。」

「どうかしたのか?名前。」

「…んー 曖昧ってたら、私の気持ちも そろそろはっきり知らせなくちゃね。」

「名前の…」
「気持ち…ですか?」

「うん。」


▼▼▼


おい おい、首無。
名前の気持ちっつうのは何だ?…なんか悩みごとでもあったのかよ。


わ、私に聞かないでくださいよ!
あぁ…私としたことが…名前様の悩み事にも気付いてあげられなかったなんて…!首無、一生の不覚です!


「ねぇ…首無。」

「…すみません、名前様。私は名前様が心を悩ませることにも気付けず…」

「え? ―――何言ってるの?勘違いしないでよね。
 まぁ…いいけど。

 心を悩ませてるのは、一応当たってるし…。」


「やはり、悩んでおられたのですね!
 あぁ…私に出来ることがあれば、何でも言ってください。」


「じゃあ、言っちゃうね。 私、首無のこと、好きなんだ。うん…好き。」


▼▼▼


え―――?


おいおい、マジかよ。(略奪愛ってのも、燃えるよな…)
って、首無!…フリーズすんなよ。


「これでもう、二人でこそこそすることも無くなったね。問題解決!よかった、よかった。」

「っ!!! 名前様、知ってみえたんですか!?」
「名前、お前…いつから!?」


「…そんなの当たり前に気付いてたわよ。

 第一 リクオはいつも夜の姿になってる時、決まって首無と部屋の隅にかたまってさぁ 私に聞かれない様に こそこそ喋ってたから、すぐに分かったわよ!

 女の勘ってものをなめてもらっては困るわ…」


今は夜。
桜の花びらの舞う縁側に腰掛け 茶を飲んでいるこの少女はリクオの幼馴染である。

そして、今晩から彼女は首無とより親密な関係になったのである。


end

20100731
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翔和様リク

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