短編ログ | ナノ
君に花束を!

只今自室のベッドで熟睡中のヴァリアーの紅一点、唯一日本人の女の子名前は、連日のハードな任務で、今日が何時で何の日なのかをすっかり忘れていた。

そんな彼女に、ヴァリアーの幹部+ボスたちはそわそわしながら、そして、いつもよりも優しい視線を送りながら過ごすことを前々から決めていた。




「名前ーーーおはーっ!!!」

「んぎゃっ!…うわっ! って、ちょっとベルくん!!
 痛い痛い痛いってば、ちょ、ギブギブギブギブゥ!!内蔵でるっ!」

「ししっ、今日も名前はおもしれぇな。
 こんな軽い王子が名前の上にダイブしたくらいでなんか、内蔵出ないってぇの。」

「いやいやいや…内蔵は出ないとしても、圧死という、とても残酷なねぇ
 …ってちょっと、ちゃんと聞いてる?ベルくんっ!」

「はーいはい、ちゃんと聞いてるって…んで、足がどうしたの?」

「あのねぇ…私は足の話じゃなくて、圧死の話をしてたの!いい?あっしよ!」


どぅーゆーあんだーすたーん?と私はちょっと小馬鹿にした様な言い方で言ってみるもベルはしししっと独特の笑い方をするだけで、私の上からは退いてくれなかった。


「あの…そろそろ、着替えたいんで、退いてもらえません?おうじぃー」

「えー? いや。」

「まじで、お願いしますってば!」

「はぁ…まったく、いつから名前は王子に命令するようになったわけ?
 って言うか、今日が何の日だか 名前は知らないわけなの?」

「へ?…なんかあったっけ?」

「……忘れてるんなら、別にいいけど…あ、そうだ!」

「ん?どうしたのベル?」


ピコーンと頭の上に電球が見えるかのように、何かを思い出したらしいベルはやっと私の上から退いてくれた。(軽いって言っても、ダイブされちゃあね…)


「オレ、誰よりも一番にお前にコレやるために来たんだった。 王子やっさし〜〜!」

「えええ?なにコレ…きれいだね!!」


ベルは白い歯を見せながら、しししっとまた笑う…私に赤色の花束を渡しながら。


「これとってもきれいだけど、一体何て言う花なの?」

「そんなん知らねぇよ。だってオレ、王子だもん!」

「はいはい。 でも、ありがとうベル!
 何でか知らないけど、ベルからの贈り物だと思うとすんごく嬉しい!」

「しししっ…王子がわざわざ買ってきてやったんだ、ありがたく思うんだな!」

「うん!」




名前はベルが部屋から出て行ったあと、着替えて朝食をとるべくして広いヴァリアー邸の廊下を歩いていた。すると前方から、ふわふわ浮いてくる赤ん坊…マーモンが見えた。


「マーモン!おはよう!!」

「あぁ…君か。おはよう、名前」

「ねぇ、今日って何かあったかな?」

「とくに―――…あ、丁度良かった名前。君に渡したいものがあるから、受け取ってよ?」

「え!マーモンも私に何かくれるの?」

「ムムッ…その様子だと、もうすでに誰かから何かもらったんだね?」

「え…あ、まぁ…ベルから赤い花束を少々…」

「ベルのヤツに先越されたね…まぁいいや。名前、はいこれ。」

「わぁ!きれいな青紫色だね!…これってもしかしてシラー?」

「…! よく知ってるね、そうだよ、これはシラーって言う地中海原産の花だよ。
 日本には古くから輸入されてたそうだね。それに、茎部分は有毒だって言うし…」

「そんな物騒なもの、私にくれないでよっ! でも…なんか、マーモンからの贈り物ってめずらしい。
 はっ、まさか、私にお金を請求しようと……わ、私 お金払わないよ!もらっちゃうよ!!」

「…貧乏な名前には請求しないさ、安心しなよ。」


そう言って、私にシラーの花束を渡してくれたマーモン。マーモンからの贈り物(しかもタダ)なんて、めったにないから大切にしないとね!




「名前!」


「げっ! この声は」

「レヴィのおでましだ…じゃあね、名前。」

「あぁ!一人で逃げるなんてズルいっ!!」


マーモンはレヴィの声を聞いて、その場から姿を消してしまった。どうしよう…あのキモイのと私は二人っきりで対話をしなければならないのかっ!?


「今日はオレから、貴様に渡したいものがある…受け取れ。」

「あー、はいはいー ありがとうございますー レヴィさんー………あ!!」

「ぬ! なんだその顔は!」

「あー…以外にシンプルな花を頂いちゃったな、と思いまして…レヴィさんに。
 これって、カラーとクローバーですよね?」

「なぬ! 貴様よくしってるな…ちなみに花言葉はしってるのか?」

「いいえー 別に知らないっすけど。 別に知りたくもないですし…」

「そうか、知らないのか…ならば教えてやろう…」

「いやいや、レヴィさん!誰も聞きたいだなんて言ってませんからね!!」


私はちゃんと言ったずなのだが、目の前にいるだけで気持ちが悪いレヴィは得意そうな顔つきで私に花言葉の説明をしだした。どうすればいいんだ? 逃げて…いいのだろうか、これは。(よし、逃げよう!)


「カラーの花言葉はだな…乙女の淑やかさ、すばらしい美、夢のように美しいと言う意味があり、純白かつ清楚なこの花は、花嫁のブーケとしてもよく使われているのだぞ。

 ヨーロッパが原産であるクローバーの葉にはそれぞれ意味があり、希望・信仰・愛情で、四枚目が幸運だ!分かったか!名前、覚えておけ!!

 …ぬ? 名前が居ない!…どこに言ったのだ、名前!!」




その頃名前は、レヴィから無事逃げ切って食堂へ着いていた。いつもだったら、居るはずの皆の姿が見られなくて少し寂しい朝食の席。



「名前ちゃぁ〜ん!おはよう!」

「ルッスーリア!おはようございます!!」

「うふふ!今日も名前ちゃんは、可愛いわねん」

「えへへ…そんなこと無いですって!ルッスーリアは今日もお肌つるつるですね!
 なに使ってるんですか?」

「あらん!分かる? 最近化粧水変えてみたのっ!」


ルッスーリアと話をしていると、そこへ朝食が運ばれてきた。一緒に食べることになって、私の右隣にルッスーリアは腰掛けた。


「そうだわ!ねぇ、名前ちゃん!もう、皆からはお花もらったかしら?」

「え?あ、はい。ベルとマーモンと………レヴィからもらいました。」

「じゃあ、スクとボスからはまだなのねぇ…んふふふ。」


朝食を食べ終わり食堂を出ようとすると、ルッスーリアに呼び止められて振り向いた。すると、ルッスーリアも花束を抱えてたっているではないか。


「わぁ!!かわいいヒマワリですね!…私にですか?」

「そうよん!何たって今日の主人公なんだからねん!」

「ありがとうございます、ルッスーリア!! …それにしても、今日の主人公ってどう言う意味で?」

「あらま、この子ったら…今日はあなたの誕生日でしょ!!」

「え? ルッスーリア!か、カレンダー見せてくださいっ!?」


「ほら、今日は7月の5日。あなたの誕生日でしょ?」

「ほ、本当だぁ……わ、私今まで忘れてて…その、」

「はぁ…でも、そこが名前ちゃんらしいと言うか、何と言うか…」


ルッスーリアは私に、微笑みながらヒマワリの花束を渡してくれた。この花束の意味を知った私は、余計に嬉しくなって、ルッスーリアににっこり笑った。


「う"お"ぉぉお"ぃ"!!名前は居るかぁ!」

「は、はい!私はここですっ」


「う"お"ぉいぃ…何ルッスーリアにホールディングされてやがんだぁ!」

「あら!…いいじゃないの、別に減るものじゃないし…ねぇ名前ちゃん?」

「そうですね、ルッスーリア!」

「いいから、離れろぉ! …ボスさんがお呼びだぞぉ!!」

「え?ボスが? 分かった。ありがと スクアーロ。ルッスーリア…行ってくるね!」

「ええ、行ってらっしゃいな!」


私よりも先に食堂から出て行ったスクアーロの後を追い私も食堂から出た。




スクアーロが突然足を止めるものだから、名前は彼の背中に顔面をぶつけてしまった。これは、なかなかに痛い。名前は若干、涙目になりながら彼に声をかける。


「す、スクアーロ…どうしたの?
 いきなり、あなたが止まるものだから、背中に顔面ぶつけちゃったんだけど…」

「名前……これやる」

「ふえ? この花は…デルフィニュームじゃん!すっごい青!きれい!!」

「よ、よく知ってんなぁ…」

「でもこっちのは?」

「ああ、そりゃ、ラークスパーって言う花だぞぉ。」

「きれいな青色だね!スクアーロありがとうっ!」

「う"お"ぉ!!」


私は嬉しくなって、スクアーロに思いっきり抱き着いた。その反動でスクアーロは少し、よれよれとしたが、二人で倒れることは無かった。


「こ、こら!あんま抱き着くんじゃねぇ!!(顔がちけぇぞ!)」

「えへへっ…だって嬉しいんだもん!」

「だからってなぁ…」


「…おいカスザメ、名前。オレの部屋の前で何やってやがる。」

「な"ぁ! ザンザス!こ、これは違うんだっ!!」

「あ、ボス。おはよう。」

「……おはよう。」


ザンザスはスクアーロから名前をベリッと引き剥がして抱き寄せた。スクアーロはザンザスに睨まれると、少し後ずさる。


「ボスさんよぉ!名前に変なことすんじゃねぇぞぉ!!」

「はんっ…誰がするか。 お前じゃねぇし。」

「! オレじゃねえってどう言う意味だぁ!」

「るせぇ…。」


ザンザスはバタンと部屋の扉を閉めてしまったので、スクアーロの叫び声は虚しく廊下に響き渡るだけだった。(でも、部屋の中へも声はバッチリ聞き取れたけどね)


「あ、あの…ボス?」

「おい名前、施しだ。」

「え?あ…バラの花束?」

「いらねぇのか? だったら…」

「いりますいります!ありがたく受け取らせて頂きますっ!!」

「ふん…」


まさか、ザンザスからももらえるだなんて思ってもいなかったので、正直驚いた名前。すると、先ほどスクアーロからもらった花束から、ひらひらとカードが落ちてきた。


「ん?……なんだろう…あ! …みんなっ」






名前へ

誕生日おめでとう。

ヴァリアー一同より









「ボス…」

「なんだ。」


「私って幸せものですね。」

「はっ…どうだかな。」

「私は幸せものです。」


その時の名前の目にはきらりと光るものがあったとか。その真相は、ザンザスしかしらない。


end

20100705
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卯魅様へ誕生日記念(∀`*)
おめでとうございます!

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