短編ログ | ナノ
今日は何の日?

ねぇねぇ、今日は何の日?
ねぇねぇ、私の大好きな人。


「今日は何の日でしょーか?」


私にはこんなにも嬉しくて仕方がない日なのに
私の大好きな人、あなたはちっとも嬉しそうじゃない。


「あぁ?」

「ほらほら、神田!今日は何の日?」

「うるせぇ…邪魔だ。どけよ名前」

「どーきーまーせーんー」


どうしてなのかな?
私にはわからないよ。


「ねぇ神田ー 今日ぐらい笑ってよぉ!」

「何で笑わなくちゃならねぇーんだ」

「何で笑ってくれないのよー!ほらほら、」

「うるせぇ!面白くもねぇのに笑えるか!!」


そう叫んだあなたはすたすたと歩いていってしまう。
この私を置いてずんずんと。


「あぁもう!待ってよ神田ぁーー!!」

「待たねぇ!」

「仕方ないわねぇ…まったく」


私は溜息を吐いてから、どんどんと小さくなる
あなたの背中を小走りで追い掛ける。


「付いて来るな!」

「いいじゃない、今日くらいは」

「…何で今日なんかにこだわるんだテメェ」

「!」


(え!?)

もしかして、神田…今日が何の日か気付いてないの?
だとしたら、一大事よね?そうよね!?


「神田さん神田さん」

「何だよ!いきなり”さん”付けとか気持ち悪りぃな、お前」


気持ち悪がられても、私にはどうしても
今日、あなたに伝えたい言葉があるの。


「もう一回だけ訊くよ?…神田、今日は何の日でしょうか?」

「はぁ?…さっきからそればっ…か………あ」

「やっと気付いたね」


「今日は…俺の……」




今日は6月の6日。
私の目の前で固まっているあなた。
私の一番大好きな人の誕生日。


「もぉ!折角祝ってあげようと思ってたのに。当の本人が忘れてたら意味がないじゃん!」

「……そうだな」

「って言うか神田!自分の誕生日を忘れてるとか前代未聞だからね!」

「……あぁ…来年からは気をつける」


神田は急におとなしくなってしまった。
あははは…見てて何だが面白いよ。

たぶん、私が思うに自分の誕生日を忘れてしまっていたことに
少なからず彼なりにショックを受けているんだと思う。


「ねぇねぇ、神田!」

「…何だ」


「生まれてきてくれてありがとう。それから、私…神田のこと大好きだよ!!」


そう伝えて私は神田からはなれた。
その時私が見えたのは、いつもより少しだけ柔らかいオーラを
発しているあなたと、にわかに顔を赤く染めたあなただった。


end

20100606
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神田さん、はぴば!

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