短編ログ | ナノ
マイ乙女ロード

「ねぇ。」
「なんさ?」

「私、もっと仲良くなってみようと思うの。」
「はぁ?…誰とさ?」

「それはもちろん―――」

「はぁあ!?」

私がラビにそう打ち明けるとラビは素頓狂のような声を出した。

「なんでそんなにも驚くのよぉ。」
「だ、だだだってあいつだぜ!いくら同じ国の出身だからってなぁ…」

「あら?同じ国でしか分かち合えないモノだってあるのよ?」

「たとえば?」
「そうねぇ〜……食文化、とか?」

私が正式にエクソシストになったのは先日のことである。そして私たちエクソシストは皆仲良しと言っていいと思う。

「それに感性的なものも彼と私…通づるものがあると思うんだよね〜」
「そ、そうなんさ?…たとえば?」

「あ、それは女の勘!としか言い様がないけどね」
「なんでさ、それ!」

しかし、それはただ一人。彼を除いてのこと。残念ながら、彼はこういうなれ合いを好まない性らしい。私が彼とはじめてあった時もすんごい目をして一言。

『お前、うぜぇ』

流石の私もこの彼の言葉には固まってしまった。お互い初対面なのに、開口一番に何故こんなことを言われないとダメなのか?それが謎で謎で仕方ない。彼に腹が立ったのも間違いないが、それ以上に私は彼に興味を持った。


「ねぇ…ユウは蕎麦がすきらしいわね?」

「あぁ…ユウは年がら年中蕎麦ばっか食ってるさ」

飽きないのかねぇ、とラビは頭をかきながら言った。私はその言葉に曖昧に相槌を打つ。いくら好きな食べ物だといっても、三食も…それに一年中同じものを食べ続けるとなると、キツいものがある。

「どうしたら仲良くなれるかしらねぇ…」
「なぁ名前、一つ言いっとくけど、ユウにあんま余計なことしない方がいいさぁ…」

「何でよぉ?」
「そりゃ、あれだぜ…ユウだからだよ!」

そう言ったラビは「切れると六幻抜刀して来っから」と付け足してブルッと肩を震わせた。

「戦闘ってことね!私にだってイノセンスはついてるわ!戦いなら負けないわよ!!」
「いやぁ…そう言う意味じゃなくってな。」

「あ、ユウだ。」

「ぎょわっっ!!!ゆ、ゆゆゆユウ!おっかえりさぁ〜〜」
「刻まれてぇのか、バカ兎。」

「おかえり、ユウ!」
「お前もか、新入り!…ファーストネームを口にするなといってるだろ。」

神田はギラリ、と鋭い視線を私とラビに向けている。だけど私はここ数日間で彼のこの視線に慣れてしまった。慣れというものは恐ろしいものである。私はしみじみとそう思った。


「いいじゃない!あ、それに私もう”新入り”じゃないんですけど!」
「何言ってやがる!新入りは新入りだろ。」

「新入りじゃあ、ありませーん!私には名前と言う名前があるんです!ねぇユウ??」
「(うぉ…何だか嫌な予感がするさぁ…)」

「…プチ」

ぷち?

「テメェ…やっぱり、うぜぇ!」
「あらそう?…私はユウ、あなたに興味津々なのよ〜〜」

神田はものすごい形相で名前を睨んでいる。名前はと言うと、その神田の側でにこにこと微笑んでいる。ラビはその二人の間にはさまれて動けない状態である。かわいそうにラビは顔を青くしつつある。…哀れラビ。

「あ、そうそう。ねぇユウ」

「その名前で俺を呼ぶな!新入りは黙って刻まれろっ」
「あら。酷いわ〜女の子にそんなこと言って…ねぇ。」

名前の次の言葉で神田もラビも固まることになった。


「ねぇユウ…私と付き合う気は無いかしら?」

「あ、恋人からじゃなくてもOKよ?―――そうねぇ…やっぱり先ずは”お友達”からなんてどうかしら?」

彼女が何を考えているのかがさっぱり分からないと言った様子でポカーン、としているラビと

「私、あなたのこと好きになっちゃったみたいなのね〜」

彼女の言った言葉に自身の耳を疑っていて硬直しつつも、意味を理解して僅かに頬を染めた神田が再び呼吸をしはじめるのはその数秒後だった。


end

20100523
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タイトルに深い意味はありませんw

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