短編ログ | ナノ
純粋にあなたを好きでいる子どものようでした

これの二人

「カラ松くんは、どこに行きたい?」
「少し考えてみたんだ! こ、これなんだが…」
「わーすごい文字がいっぱい。今日一日では回り切れないね」

胸ポケットからカラ松くんが取り出したのは、ビッチリと文字で埋め尽くされたメモ用紙だった。ちらりと覗けば、男らしい無骨な字が並んでいるかと思いきや、案外、几帳面に整った字がところ狭しと並んでいてくすりと笑ってしまう。

「あ、あと、俺が行きたいばかりじゃだめだから…」
「うん?」
「もしよかったら、名前の行きつけとか、好きな店とかも行ってみたい」
「私の? うーん…」

私はあまり出歩く方ではないからなぁ、カラ松くんの言うところの『行きつけのお店』は無いに等しい…どうしようか。

「い、嫌か?嫌なら無理する必要はないぜ!」
「いやってわけじゃないけど、急に言われると困るなぁ…」

今日のデートだって、カラ松くんからのお誘いだ。私たちは、値段の張るオシャレなお店に出入りすることはあまりないけれど、家じゃない外の世界にカラ松くんが連れ出してくれるなら、私は大抵どこへ行っても楽しめるんだ。この間は初めて釣り堀に行くことができたからね。

「焦らなくていい。俺たちにはまだ時間がたっぷりあるんだからな、二人で行きたいところをじっくり考えよう」

そっと惑う私に、ニカリと頬笑みかけるカラ松くん。彼はいつでも私に優しくしてくれる。それに大切に扱ってくれることがよく分かる。私も同じだけ、彼に同じものを返すことができているかな。私ばかり満たされて、ちょっと不安。

「考えるだけでもわくわくするね」
「そうだな。だが、俺はイメージだけじゃ満足しないぜぇ!」

名前もそうだろう、と自信ありの流し目で私を見る彼。私もそれに頷いて、そっとカラ松くんの腕に自分の腕を絡めた。そして少し汗ばんだ彼の手を取って歩こう。彼のすべてで私が見たされるように、私の何かで彼が満たされてくれたらいいな。

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20160110
title by ゾウの鼻(http://acht.xria.biz/)

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