短編ログ | ナノ
受話器の向こう側

「もしもし。スクさん、おはようございます。」

「お前は…。」

「あぁ、はい、名前です。」


お天道様もまだ眠っている時間。
備え付けの時計に目をやれば、オレが寝てからまだそう時間が経っていなかった。


「こっちが何時だか知ってっか?あ"?」

「もちろん、存じております。夜明け前の…「特別用件がねぇんなら、切るぞぉ。」ちょっと、」
 
「待って下さい。用件があって電話差し上げたんですから、切らないで!」


お誕生日おめでとうございます!!

と、受話器の向こう側から聞こえてきた。
一瞬なんのことだか分からなくなったオレは、呆気に取られるも、部下の手前。
言動には注意を払わなければ…


「あ?…お、おう。…ありがとな。」


取り繕うようにことばを繋げば、けろりとすぐに返事が帰ってきた。


「御礼を言うのは、こちらの方ですよ。
 生まれて来てくれてありがとうございます、隊長。そして、お母様やお父様にも感謝します。」

「そりゃ、どーも。」


少し間があって、急にしおらしい声になった。


「朝早くにすみませんでした。スク隊長も、日番の朝くらいゆっくり寝てたいですよね。」

「たしかになぁ。」

「だけど、どうしても…」


この日の一番に祝いたかったのです。
だなんて、可愛いこと言ってきやがる。


「これからもかっこよくて、うるさい作戦隊長でいてください。」


だいすきです。


「なっ!!?」

「それでは、これでっ!」


ツーツーツー…
と受話器からは、無機質な音が響いている。


「言い逃げは、禁止だろぉ。…なぁ、」


眠気なんて、ぶっ飛んだわ!この野郎!!


『Squalo, Buon Compleanno!!』


end

20110313
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スクさん、はぴば!

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