ある日突然、我らの暴君であるザンザス様が小さくなっていました。
小さくても、流石はザンザス様と言うべきでしょうか…目付きは鋭いです。
「どかしゅが!」
「……ぼ、ボス!?」
何と言いますか…いつもの迫力がありません。
確かに目付きは鋭いですけども…赤い目はご健在ですけども!
それに…「ドカスが!」ではなくて「どかしゅが!」ですよ!
ああもう…母性本能をくすぐられると言うか、何と言うか…
「名前、肉くわせろ」
「ですがザンザス様、スクアーロ様がおっしゃるには―――」
「あんなかしゅざめの言うことなんか、聞かねー!肉くわせろ!」
小さいザンザス様…いつもより口数も多くていらっしゃいます。
駄々をこねる姿が愛おしくてたまりません。
「う゛お゛ぉい!ボスさんよお!帰って来たぜぇえ!!」
「うるせぇぞ!」
ヒュッ――バリーン!
「う゛お゛ぉい!何すんだ、痛てぇじゃねえかぁあ!ザン、ザ…ス……?」
スクアーロ様はウィスキー入りのグラスを顔面キャッチの後、固まってしまった。
それもそうだろう…自分の忠誠を誓ったこの世でただ一人のボスが小さくなってしまったのだから…
「う゛お゛ぉい!お前ぇ 本当にザンザスかぁ!??」
「なにいってる、かしゅざめがっ!オレ以外のだれだっていうんだ!」
「スクアーロ様、ちょっと来てください―――」
「あぁ゛?」
私はスクアーロ様に全てを話してみた。
すると、訳が分らないと言うように頭を抱えていた。
「ムムッ、スクアーロと名前じゃないか。どうしたんだい こんなところで」
ちょうどその時、マーモン様が任務を終えて帰って来たようだ。
私とスクアーロ様に声をかけるとふよふよとボスの机の上へ報告書を置きにいく。
「おや?この子共は誰だい、名前?……もしや、ボスの隠し子…」
「う゛お゛ぉい!そんな訳ねぇーだろぉおお!!マーモンてめぇ、コイツの目ぇ見てわかんねぇのかぁ!」
「…目?――――ぁ、ボス?」
「そうなんです、マーモン様……どうしてか、ボスが小さくなってしまわれて…」
小さいザンザス様…いえ、ちびボスは、中に浮くマーモンを見上げるように睨んでいる。
あぁ、本当にどうしたものか。
「そう言えばボスって、昨日…確か―――」
「何ですか、マーモン様?」
「もしかしたら、の話だけど……アイツが関わってるかもしれないよ」
「…アイツ、と申しますと―――?」
「黄色いおしゃぶりのアルコバレーノ―――リボーンだよ」
「黄色いおしゃぶりの…」
アルコバレーノ、リボーン。
リボーン様と言えば、リング争奪戦の時ザンザス様が負けた相手…沢田綱吉様の家庭教師。
そして、スクアーロ様の同窓であるキャバッローネファミリー十代目ボス。
私もよく知るディーノ様の元家庭教師だ。
さらに、我がボンゴレファミリー現ボスである、ザンザス様の義父。
九代目に深く信頼されている敏腕ヒットマンと言えば彼のことになる。
その彼が、今回ザンザス様が小さくなってしまわれたことに関与している。
と、マーモン様はおっしゃるのでしょうか?
「昨日、何か変わったものをボスが口にしたとかは無いかい?」
「昨日は…最高級サーロインと赤ワインを少々と、いつものウィスキーだったと思いますが…特には」
「……そういえば」
「何ですか、ボス?」
「ゆうしょくのあと、部屋にもどったらこづつみがとどいてた」
「…もしかして、それを開けたんですか?」
「……あぁ」
絶対ソレだ!!!
中に何が入っているか、を聞いていくとザンザス様は思い出せないと言う。
私の仮説では、身体に何らかの形で影響を及ぼすようなものがその小包の中に入っていたとする。
それを知らず、ザンザス様は小包を開けた所、今のような小さいお姿になられてしまったのではないだろうか?
沢田綱吉側の守護者のうちには、十年バズーカと言う武器を持つ牛柄の子供も居た。
きっと、その類いのものを、リボーン様はザンザス様に送りつけたのだと、私は考えた。
「う゛お゛ぉい!何だかよくわからねぇが、ジャッポーネに飛ぶぞおお!」
「えぇ!!今からですか!」
「何か文句あんのかぁ!?明後日には、ボンゴレとヴァリアー幹部の集会があんだろ!」
「あ、そうでした…ね、」
「こんなちっせぇままのザンザスを連れてけるかぁ!!」
「ちっせぇって言うなああーーー!どかしゅがーー!」
メロスは激怒した。スクアーロも激怒した。そして更に、ちびボスも激怒した。
するとそこへ、ティアラを頭に乗っけたボーダー服の少年が来た。
「二人で何してんの?って、マーモンもいんじゃん……ってかソイツ誰?」
「お帰りなさいませ、ベルフェゴール様。こちらは―――」
「うるせぇ!名前!せつめいはいーから、早くオレを大きくしろ!」
ちびボスは私を下から一生懸命に睨んでくる。
どうしよう、すごく抱きしめたい衝動に駆られるのだが…ここはグッと堪える。
ちびボスは睨むだけでは足りなかったのか、私に走りよって来てタックル!
それから、私のお腹や腿へパンチをしてくる…が、所詮は子供の力で全然痛くはない。
でも、流石にタックルにはよろけて、スクアーロ様に支えてもらったが…
「え、そのちびもしかして、ボス?」
「そうなんだよ、ベル。この子供は僕たちのボスのザンザスだよ」
「へぇ〜〜〜、オレよりも小さいボスなんてはじめて見たし〜」
そう言いながら寄って来たベルフェゴール様は、ボスの目線までしゃがんだ。
すると、一旦私を叩く手を止めて、ベルフェゴール様の方を見やった。
「なんだ、?」
「……ボスは、小さくてもボスだな、ししっ。…そんじゃ、オレ次の任務あるから〜」
「あ、ベルフェゴール様、いってらっしゃいませ!」
「ん〜」
ベルフェゴール様は、そのままひらひらと手を振り部屋を出て行った。
そして、それに続いてマーモン様も「まぁ頑張りなよ、僕は休むから」と言って自室の方へと戻っていった。
ボスの執務室に残されたザンザス様とスクアーロ様と私は、取り敢えずイタリアを経つ準備に取り掛かった。
ザンザス様の荷物まとめは、私の部下に任せ、私は自室へと荷物をまとめに行く。
「う゛お゛ぉい!名前―――」
「はい、何でしょうか、スクアーロ様?」
とその途中、廊下で一緒に部屋を出たスクアーロ様に呼び止められた。
ちなみに、私はボスの執務室から右側の廊下、突き当たりから左に三つ目の部屋が自室となっている。
これは、ボスがいつでも私を呼べるように、と言うことからここが私の自室となった。
スクアーロ様の自室は、左側の廊下からしか行けないので、私は自然と後ろを振り向く形となる。
「わりぃが、オレは餓鬼が嫌いだぁ…」
「そう、ですか……?」
「数日間のザンザスの世話は、お前に任せてもいいかぁ?」
「はい、それは結構ですが……あの、」
「…?なんだぁ、言ってみろ」
「食事の材料などの調達は、私よりスクアーロ様の方が融通が利くと思うので、お願いしたいのですが…」
私がそう言うと、スクアーロ様は面倒くさそうに、だけども仕方なさそうに返事をした。
そして、それぞれの部屋へ向かうべく私とスクアーロ様は分かれた。
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並盛には夜までに無事到着した。
今日は土曜日と言うことで、沢田綱吉様のお宅へは明日伺うことになった。
伺う…と言うのはちょっと訳が違ってしまうが。
「名前!かしゅざめはどうした」
「え、と…スクアーロ様は、山本武様のお宅兼お寿司屋さんへ向かわれました」
「…そうか……すし屋か、―――――よし、名前、オレもすし屋にいく」
「えぇ!お夕食はホテルのコースを食べるのでは?」
「気がかわった、オレはすしが食いたい」
そう言うザンザス様の意向で、今晩のディナーは竹寿司となった。
私はホテルのキーを手に持って、簡単に身支度をする。
さて、ザンザス様は無事に大きく元通りになれるのでしょうか…?
to be continued?
20110107
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続いちゃう話。
ってのは、真っ赤なウソ!
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