短編ログ | ナノ
いけないことをする?

それは、ある昼のできごとであった。

銀時はいつも通りにソファーで昼寝をしていた。
昨日はめずらしく仕事があったのでそれはもう、ぐっすりと。





「おっじゃましまーす」


「銀時ーーっ!名前様が来てやったぞー」




そんなとき、銀時の寝ている部屋の窓からこんにちは。
よっこいしょ、と登場した彼女、名前は不法に侵入して来た訳である。
よい子はマネしちゃだめだぞー


「銀時―――あれ?」


名前が部屋を見渡すと、そこには幸せそうに眠っている銀時の姿が。
なんだぁ…寝てたのか。


「折角来てやったと言うのに、銀時が寝てちゃあ…つまんないねー」


名前は再び部屋の中を見渡した。
銀時の机のあたりに目を向けたところで名前の瞳がキラリ、と光った。



「お!…いひひひっ、みぃつけた!久々のイタズラだぁ」



ふっふっふっふっふ〜〜〜っ!


「これで準備は万端だな」


キュポ、と名前は右手に持っているマジックペン(水性)にふたをする。
さて、銀時はどんな反応をするかな?…楽しみだ。


「そうだ!」


名前は何か思いついたように銀時の傍を離れ、部屋を飛び出した。









「ふわぁぁあ〜〜……よく寝たなぁ………ん?」


名前が部屋をあとにした約四十分後に、銀時は目覚めた。
そして、あることに気付く。


(オレ…こんなところにペンなんて置いたっけなぁ)


名前は詰めが甘かった。
いつもは机の上に置いてあるペンが何故かソファーの上にあったのだ。

銀時は嫌な予感がして鏡を見ると…


「あ"!このヤローー!名前ーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


そこには、らくがきされた自分の顔。


(うわっ!やっべーぇ…銀時怒ってるよマジ怒ってる〜)


名前は今、お風呂の湯船に隠れている。
せまいこの家の中では、銀時の叫び声が丸聞こえだ。

…うん、あとでお登勢さんに謝っておこう。


「銀時の叫び声がうるさくてすみませ〜んってな…(くすくすっ」


ドスドスドス!と迫る銀時の足音に祈る名前。
(やばっ!か、かか神様ァアーーーっ!)


「どこにいやがんだ、アイツは…オレもそろそろ我慢の限界だ!ったくよぉ」


バシャバシャと水音が聞こえてくるから、銀時はらくがきを洗いに来たのだろう。
洗面所とお風呂場はほんとに近い。

すぐそば。
戸一枚、壁一枚の距離に銀時は居る。


(ここで物音一つでも立てれば……私の命は―――――無いっ!)


プルプルと震えながら、お風呂場の戸が開きませんようにと願う名前。


「オイッ!これ消えねーんだけどォオーーー!!」


銀時の叫び声を聞いて、吹き出しそうになる衝動になんとか堪える。
(ッ!!…やめてくれよ銀時…こ、こんなときに―――っ)



水性のはずのペン。
しかし、銀時の顔のらくがきはなかなか消えぬまま、十五分の時間が過ぎた。


「やっと消えたぜ…」


銀時は濡れた顔をタオルで拭き、溜息をついた。
いまだに湯船に隠れている名前はと言うと、疲れていた。
それはもう、とても、すごく、めっちゃ、かなり、疲れていた。

なぜなら名前は銀時が顔を洗っている約十五分の間をずっと
息をする回数を減らし、気配を断ち、身動き一つしていなかったのだ。
疲れるのは当たり前である。

そしてお決まりで最悪の事態が起きた。


(ムズムズ…ふぇ!…ま、まさかのくしゃ……)


「……ッくっしゅん!!」



や、やややっちまったぁぁああああぁあああぁあああーーーーーー!!!

ああ、もう!私のバカ、あほっ!私死ねぇぇえええーーーーー!
名前は自分のしたくしゃみを殺したくなった←


銀時は名前の小さなくしゃみに気付き、すぱーん、とお風呂場の戸を開ける。
そして、ついに見つけられてしまった名前は冷や汗を流した。


「や、やややあ!ぎぎ銀時!」


ギギギっと音が出るぐらいにスローでぎこちない振り向き動作の名前。


「はははー見ーぃつけた!ねぇ、名前くん…なんで隠れちゃってるのかなぁ?」

「隠れるなんてそ、それは…ちょっとお風呂に入りたい気分だった…から?」


銀時はこめかみをひくつかせながら、更に質問を続けた。
その姿に名前は怯える。


「服着てお風呂っておかしくなあい?」

「服着て…お風呂って……きゃーーーーっ!銀時のえっちッ!!」


ぱこーーん

とりあえず、近くにあった洗面器を勢い余って投げ付けた。
そしてそれは、銀時の顔面に見事ヒットした。

銀時の怒り度は頂点に達する。



「お前なぁ!人が折角気持ちよく昼寝してんのに顔に落書きすんなよ!!!」

「すみませんでしたぁ!銀時のおっしゃるとーりですっ!」


「しかも裸じゃねーくせにえっちって叫ぶな!そして洗面器を投げるバカが何処に居るんだよ!!」

「銀時様、申し訳ありませんでした、そのとーりです!」


「ちっ………めんどくせーなぁーったく」

「ごめんなさいっっ!!!」



勢いよく頭をさげながら謝ってくる名無しさんに銀時もやっと落ち着きを取り戻し
名前の頭をコツン、と叩いて、風呂場を出ようとした銀時だったが…思いとどまった。


「待てよ。ここまでされたんだからオシオキしねぇとなぁ」


ニヤリ…


「(ゾクッ)!?!?」


銀時があのアヤシイ笑みを漏らすとろくなことが起こらない。
それは今までの経験から理解できる。

そう思った名前は逃げようとするが入り口をふさがれてしまっている。
窓から逃げようとするにもお風呂場の窓は小さすぎて出れる訳がなかった。


「やめろよな、もう〜〜〜」

「うるせぇなあー、風呂入れ名前」

「なっ!?」


「風呂に入れっつってんだよ!」

「わ、わわ私服脱がないからな!?」

「誰も脱げって言ってねーだろ!(そりゃ脱いだ方が嬉しいけどよ)」


仕方がなく名前は湯船の中に入り座って不機嫌そうな顔をする。


「これでいーのかね、銀時くんー?」


座ったままの状態で必然的に上目遣いの名前は低い声で聞いた。
不覚にも銀時はそれにドキッとしてしまった。


「…おう、そのままでいろよ」


銀時はそう言い終えると銀時はシャワーを手にする。


「な、何すんのよ…?」

「大丈夫だ、痛いことはしねーよ」


不安げに見上げてくる名前に銀時はシャワーをつけ、またニヤリと笑う。


「うへっ、つめたっ・・・!」


シャワーから流れ出て来たのはお湯でもなく冷たい水。
名前は頭からシャワーの水をかぶった。


「冷たいってば、銀時!やめろコラーーーー!」

「お前さー……知ってるか?」


私がそう叫ぶと、銀時の気の抜けた様な返事がふって来た。


「な、何が…」


「お前…濡れてる時……名前の顔ってぇのはすんげー色っぽいんだぜ?」


ニヤニヤしながら名前を見下ろす銀時。
その顔はどっからどう見ても変態!


「し!…死にさらせぇっ!!銀時ィイイーーーーー!!!」

「何とでも言えよ。(たまんねーなァ)」

「もう帰るっ!」


顔を真っ赤にし、勢いよく立ち上がった名前。
その立ち上がった名前の肩を掴み、銀時はキスをした。


「んっ…!」


銀時はその最中、少し目を開けてみた。
そこには必死に耐えているような顔をしている名前のドアップが。

目蓋を震わせ目をぎゅっと瞑り、頬を真っ赤に染めている。
そしてゆっくりと唇を離してやる。


「なぁ……」

「っな、何だ?」



このままシよーぜ?だなんて、そんな言葉。
私は力の限り、銀時の顎にアッパーを喰らわした。

ほんのわずかなイタズラ心で、ファーストキスを奪われ
挙げ句の果てには処女まで奪われようとしていた。

そして名前は野に駆ける兎のようにその場から逃げる。
ちょっとした出来心でイタズラをするのはもうこれで最後にしよう。

走りながら私は考えていた。


end

20100423
20101228 再UP
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ちょっとした
title by へそ(http://pppp.2.tool.ms/)

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