短編ログ | ナノ
狂喜と凶器

高杉晋助。
ねぇ、アンタ狂ってるよ。

高杉晋助。
アタシを斬りつけたアンタ。

アンタ、狂ってるよ。
可笑しい可笑しい。

真っ赤に光る刀を片手に
片目のアンタは笑ってる。

妖しく妖しく。
アタシを深い眠りへと誘う様に。

高杉、晋助。
アンタは…狂ってるよ。

真っ赤に染まったアタシ。
アンタに斬りつけられた傷がジクンと熱を帯びて。

ケタケタケタケタ。
笑うアンタは、月を背に。

アタシはただ、地べたに寝転んで
アンタを下から見上げてんだね。

月を背負って、アタシの赤色滴らせて
笑うアンタは狂ってる。

だけど、でも
そんなアンタにでさえ、愛おしく思うアタシは

もっと、狂ってる。
愛しい愛しい。

満月は人を惑わせる。
アンタとアタシはその一人だね。

高杉晋助。
ねぇ、アンタ狂ってるよ。

高杉晋助。
アタシを斬りつけたアンタ。

アンタ、狂ってるよ。
可笑しい可笑しい。

アタシも狂ってんだね。
楽しい楽しい。

最期がアンタで良かった、だなんて
なんて愚かなお伽噺。

それは語り継がれることは無く
アタシとアンタだけが唯一語れる一つの夢物語。

(名前、これでお前は俺のモンだ)
(高杉、晋助…アンタは狂ってるよ)

満月の夜の片目の男と真っ赤な女。
アンタとアタシの話だよ。


end

20100830
20101226 再UP
----------
高杉さん=夜/血/月/酒

その話、語り継がれること無く
title by 水葬(http://knife.2.tool.ms/)

::122::

×||×
ページ: