短編ログ | ナノ
男の子は雪の夜、星を眺めた

暗い。

こんなにも暗くなるのは早かっただろうか。
そんなことを思いながら、私は自転車をこいでいる。

ふと空を見上げると、たくさんの星が瞬いていた。
冬は空気が乾燥し、澄んでいるために星がより美しく見える。

自転車を降りてみた。
冷たい空気が肌を刺したが、私は構わずに星を見た。
あれは、オリオン座だろうか?


「ねぇ、」と後ろから声を掛けられたので振り向いた。
するとそこには、学校一の不良である風紀委員長様がいつもの学ラン+マフラー姿で立っていた。

どうしてここにいるのだろうか?
私は疑問に思ったが、彼に質問してみようとは思わなかった。
だって、その質問で彼の機嫌を害して咬み殺されたりしたら大変だ。

取り敢えず、寒かったので両手を上着のポケットへと突っ込んでみた。
相変わらず、彼の黒い目は私を見ていたような気がしたけど、目が合うことはなかった。

すると、ふわふわと白いものが落ちてきているのに気が付いた。
その白いものは、空から落ちてきて地面に着くと溶けてなくなってしまう。

彼の黒い学ランに白い模様が付いては消える。
二人の間には白い息が出ては消えていった。


「早く帰りなよ」
「…はい、」


彼は何故、私を呼び止めたのかは、未だ謎のままだったが…
私にそれを言うなり、彼はくるりと方向を変え、闇へと溶けていった。

ぼーっと彼の歩いていった方を眺めていた私。
気付いた時には自転車のサドルには、うっすらと雪がかかっていた。
それを払って、私は自転車に乗って家へと帰った。

今年のクリスマスはホワイトクリスマスだなぁ。
そんな単純なことに、私は密かに喜んでいた。


男の子は雪の夜、星を眺めた


end

20101219
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クリスマス記念6

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