短編ログ | ナノ
愛は食卓から

別個で任務が何日間か続くと、時間の感覚と言うものが麻痺してくる。するとどうだろう…三日前くらい前に会った同寮たちと、こうして顔を会わせて食事をするのも、すごく久々に感じるのだ。

ふりるの付いた、可愛らしいエプロンを来て食事を運んでくるのはルッスーリアの仕事だ。私たちヴァリアーのお母さんポジションも、ずいぶんと板に付いてきている。いつもは、その美しいく付き過ぎている筋肉と彼の華麗なムエタイを発揮している腕も料理に振るわれる。

私はそんなルッスーリアの料理がすきだ。どんなに高級なレストランで食事をしようが、彼の作ったスフォリアテッレに勝てるものは無い。他の幹部達がどう思っていようと、彼の手料理は私の中で確実な地位を築いている。


食事をするとき、私の右隣にはスクアーロが座る。そして左隣にはベルが。この座席順はいつの間にか決まっていた。

ボスは上座の方に、マナー的には良くないけど足を置いてどっかり座っている。しかも、ボスのイスは私たちが使っているどのイスよりもフカフカで豪華である。前にこっそり座ってみたが、ボスは毎回ここで食事を摂る時、こんなにも柔らかいイスに座っているんだなぁってちょっと、恨めしく思った。

まぁ、そんなことをボスに言えるはずも無いが。だから私は、そう思っていることをおくびにも出さないように食事をすすめる。

マーモンはベルの正面に、ルッスーリアはその隣り。レヴィはボスが来る前には食事を終えるようにして、ボスが来るとボスの近くに立つようになっている。


あぁ、ところで、私はグリーンピースが嫌いだ。
前にスクアーロのお皿にポテトサラダに入っていたグリーンピースを出していたら、拳骨が飛んで来た。余りの痛みに涙が出たが、私はスクアーロがイスに座ったと同時に足を踏むと言う仕返しをしてやった。余程強く踏み過ぎたのか…もちろん、全体重を掛け、全身全霊で踏みつけたのだが。スクアーロの目にもキラリと光るものがあった気がする。

結局スクアーロに無理矢理口の中へ詰め込まれて、私はグリーンピースを食べる羽目になった。本当に味も匂いも嫌いなので、吐き出したかったのだが、ベルが面白がって両手を押さえて、スクアーロが口を押さえ付けるものだから、飲み込む他なかった。

その次の日、彼らの足が赤く腫れ上がったのは言うまでもない。グリーンピースの恨みを込めて、全体重を掛けてピンヒールの踵のところで勢い良く踏みつけてやった。ベルはどうだか知らないけど、スクアーロはやはり、キラリと光るものを浮かべていた。

だけども、スクアーロには感謝してほしいと思う。ちゃんと、昨日と違う方の足を本気で踏んづけてやったのだもの。これは、私の少しだけの優しさだ。


このあと、ルッスーリアにしばらくグリーンピースを使った料理を出さないで、と頼むと快くOKしてくれた。なんとも、ベルとスクアーロの二人にも私のこの要望と同じことをお願いされたらしい。余程、私のピンヒールが効いたのだろう。

これからの脅しに使えるかなぁって思うと、口角がゆっくりと上がるのが自分でも分かった。彼と分かれる前に、私の大好きなスフォリアテッレをお願いしておいた。私が、彼のスフォリアテッレは絶品だとかなり大袈裟に褒め讃えると、ルッスーリアは身体をしなやかにくねらせながら喜んでいた。

大袈裟に褒めてみても、彼のスフォリアテッレのおいしさにはまだ足りないくらいだ。私は本気でそう思うのだが…


そんな事を思いながら、三日振りに幹部で食べ切った夕食だった。ボスは自分が食べ終わったら、すぐにこの食堂を出て行ってしまった。そして、レヴィもボスに続いて出て行った。

ここに残っているのはいつものメンバーだ。そろそろ、マーモンは任務に出掛けてしまうらしい。任務に出る前に彼の頬を触りたいのがだ、お金を取られるので我慢しなければ、と思った。減るもんじゃないのに、と愚痴を零すと彼はふわふわと漂って消えた。任務に出掛けていったのだ。

ルッスーリアは食後に私のリクエストのスフォリアテッレを作って持って来てくれた。そして、紅茶を飲みながら二人で食べていると、まだここに残っていたあとの二人も食べに来た。私の食べる分が少なくなってしまうじゃないか、とジト目で見ていると、目が合ったスクアーロに苦笑いをされた。

まぁ。今日は機嫌がいいから許して上げよう。
トスッと隣りに座ったのはベルだった。口の周りにスフォリアテッレの白い粉砂糖を付けながら食べている彼を見ていると、なんだか笑えてきた。その事に気付いたルッスーリアも、微笑ましいものを見るような目付きで紅茶をすすった。


あぁ。なんか幸せだなぁ。連日の激しい抗争なんて、忘れてしまう。今日はいつの夜だろうか。まぁ…今はそんなこと、どうでもいいだろうか?

ルッスーリアのスフォリアテッレは最高だ。もう、今日だけで何度思ったことやら…明日は魚料理が食べたい、とルッスーリアに言うと、彼はわかったわ、と言ってくれた。そこにすかさずスクアーロがマグロのカルパッチョにしてくれぇ!と叫ぶ。ベルはスフォリアテッレを食べ終わって、服の袖で口元を拭っていた。


愛は食卓から


(スフォリアテッレは大好き)
(グリーンピースは大嫌い)
(あったかい食卓だ)


end

20101215
20130607 加筆
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ヴァリアーの食卓?

例のテーマが頭の中を流れています。
レッツ 3分クッキング!

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