結局、魚を焼いたり肉を焼いたりするのは面倒なのでシチューにした。 真っ赤な鍋にホワイトシチュー。 味は分からないけど見た目は合格ね、と呟いた。 「ほら、できたわよ」 机の真ん中に鍋を置く。 先程から体がだるい、早く椅子に座りたかった。 「あ、シチューだ」 「オレ肉が…」 キッと睨んでその先を封じる。 文句あるなら食べなくてもいいのよ、と冷ややかな視線を送れば、シチュー食べたかったんだよなぁ、とわざとらしい声で言った。 「「いただきます」」 「どうぞ」 手を合わせて礼儀正しく言うそれに返事をすると、ガツガツと食べ始めた。 「おいしい?」 「あい!ルーシィ料理は上手だね」 「"は"って何よ。ナツは?」 「ウマい」 それ以外何も言わずに黙々と食べるナツ。 美味しくなかったのかな、と不安になったが、おかわり、とお皿を突き出してきたので安心した。 「そんなに美味しい?」 まぁ、私が作ったんだから当たり前よね、と言えば、おう、と返事が返ってきた。 「特に肉が」 「お肉なの!?」 そんなことより、とナツが続けた。 「ルーシィ食わねぇの?」 自分の手元にはまだ手をつけていないシチュー。 体がだるくて、食欲がない。少し頭も痛い。 そう言うと、ふうん、とナツは面白くなさそうに呟いた。 「そういえば、ルーシィ顔悪いね。大丈夫?」 「そこの猫、"色"抜くな」 突っ込みながら、ルーシィはナツのおかわりを盛るために席を立った。 が、 「あれ?」 その瞬間、視界がぐらりと反転して目の前が暗くなる。 遠くの方でナツとハッピーの声が聞こえた。 目を開けたら、心配そうに覗き込む4つの瞳があった。 「あれ?私……」 「さっき急に倒れたんだ。具合、大丈夫か?」 その言葉に辺りを見渡す。 どうやら倒れた私をベッドの中まで運んでくれたらしい。 「うん、大丈夫。ちょっと疲れたのかな」 「そうか?なら俺達もう帰るな。1人の方がゆっくり休めるだろ」 そう言っていつもは私を強く引っ張る手で、私の頭を優しくなで、じゃあなと手をそこから離した。 疲れで弱っているせいだ、そうに決まってる。 待って、とついナツの服をつかんでしまった。 恥ずかしくて慌てて放すが、ナツはん?と顔を近づけてくる。 「どうした?」 もし聞き返されたらなんでもないと言う。 そう決めて、寂しい、と小さく答える。 けれど耳の良いナツには聞こえていて、じゃあ手握ってるな、と言われた。 ギュッとナツの手が、右手を包む。 ――あたたかい 「あ、おいらも手握る!」 そう言って左手をギュッと握ってくれた。 「安心して寝ろよ。ずっとここにいるから」 ありがとう、と言って目を閉じた。 両方の手から伝わるぬくもりが何だかくすぐったかった。 |