「誰かいるかー?」 ナツのその質問に返答はなかったが、笑い声がより大きく聞こえるようになった。ナツの手に引かれながらルーシィは辺りを見渡すと、視界の隅に何かが見えた。 「ナ、ナツ」 「あ?」 「あっちに今なんかいた」 ルーシィが指を指すとナツはその方向へ歩き始めた。ルーシィも一緒に歩き始めたとき、頬に何かぬるっとしたものが触れた。 「いやぁあ!出たぁぁあああ!」 頬に触れた何かをどけようとして、手を必死で動かすルーシィ。すると手に触れたガラス製のものが床に落ちて、パリンっと音を立てて割れた。 「…今回の仕事で報酬減らされたら、ルーシィのせいだな」 「そんなことどーでも良いから、これどうにかしてー!」 「どうにかって、ただの犬じゃねぇか」 「いやぁぁああ……え?」 「ルーシィ犬に舐められてんだよ」 頬を舐めている物体を良く見てみると、その言葉通り犬だった。 「じゃあ子供の笑い声って…」 「犬の鳴き声を笑い声と勘違いしたんだな」 お化けじゃなかった…? ルーシィはそう思った瞬間、腰の力が抜けて慌ててナツが抱きとめた。 「大丈夫か、ルーシィ?」 「大丈夫、ありがと」 そう言って腕の中から出ようとした時、ギュッとナツに抱きしめられた。 「な、なに?」 「いや別に。」 恥ずかしい…。 けれどナツの体温が温かくて、ついナツの胸に耳を近づけた。聴こえてくる鼓動が心地良かった。 もう少しこのままでいたいと思った。 おまけ<ナツside> なんだよ、ただの犬じゃないか、依頼者も自分で確認してみればいいものを。もっと強い魔物か何かなら楽しいバトルができたのに。 そんなことを思っているとルーシィが、緊張が解けて腰を抜かしたのか、倒れてきたので慌てて抱きとめた。抱きとめたその体は、震えていた。 そんなに怖かったのだろうか。確か、手を握ったときも震えていた気がする。 腕から抜けようとしたのでついギュッと抱き締めるとルーシィが体を寄せてきた。胸が大きく跳ねる。 何だろう、この気持ち。でも嫌じゃない。 だから、もう少しこのままで。 |