その腕の中には大切な 「あら、意外とキレイな屋敷」 「なら幽霊なんて出ないな」 「でも仕事内容はホラーよ」 帰りたいなぁ、とルーシィは小さく呟いた。 仕事の内容は夜な夜な屋敷のどこかから聞こえる子供の笑い声をどうにかして欲しい、というもの。屋敷には犬がたくさん飼われているのでハッピーは来ていない。 「帰りたいって、報酬額が高いからこれにしようって言ったのルーシィだろ」 「それはそうなんだけどさー」 報酬額に釣られて内容をしっかり確認しなかったのよね。 「ほら、行くぞ」 「ちょっとナツ!待って!」 キャッキャッキャッ、キャッ――。 屋敷の廊下に響く子供の笑い声で、ふっと我に返ったルーシィ。 そうだった。あの後屋敷の主人に会って事情を聞き、0時を過ぎたぐらいから屋敷を見回っていたんだ。 キャッキャッキャッ、キャッキャッキャッ――。 先程の笑い声よりもそれは、はっきり聞こえる。きっと声の主に近づいている証拠だ。 って、 「いやー!かーえーりーたーいー!こーわーいー!」 「静かにしろよ、ルーシィ。逃げられるだろ」 「…むしろ逃げていただきたい」 逃げられたら報酬もらえねぇぞ、とナツに冷静に突っ込みを入れられるが、ルーシィは帰りたいと大声で叫んでいる。 大声を出せば少しは恐怖も和らぐのだろうが、今は夜中で屋敷の人にも迷惑だ。はぁ、とナツは小さくため息をこぼしてルーシィに右手を差し出した。 「ほら、手」 「何?」 「手、繋げば怖くない」 「……ありがとう」 遠慮がちに差し出された手をナツはしっかりと握って再び歩き出した。 ナツの手は大きくて暖かくて安心できるところだった。 「…声はこの部屋から聞こえるな」 少し歩いてナツは1つの部屋の前で立ち止まった。 「ルーシィ大丈夫か?」 「うん」 ナツが手を繋いでくれてるから、は悔しいから言わない。 「開けるぞ」 ナツはそう言って扉を開けた。 |