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「いくぜっ魔神剣!」

「ファイアボール!!」


二人を少し離れた所から目で追うのも慣れてきた気がする。

だから魔物達と戦いながら少しずつ上達していく彼等の背中を眺めながら、ロイドやジーニアスのマナの動きなんかをこっそり真似をすることにした。


「これから会いに行く友達ってもしかして給食のパンを渡してるやつか?」

「え、知ってたの?」

「だっておまえ、いつも給食の時パンをカバンに隠してるからさ」

「うん・・・いつも食べるものがなくて辛そうなんだ」


ぼんやりと二人の会話を後ろで聞き流す。

私もいつか困ってる人やみんなの力になりたいなぁ・・・。




「・・・あ、ボクここに用があるんだ」


ジーニアスが道の途中で立ち止まった。


「・・・!」


「ディザイアンの人間牧場?ここに来ると不可侵条約ってのに反するんじゃないのか?」


「ディザイアンだって聖堂に攻めてきたじゃない」

「そりゃまぁそうだけど・・・」


言いくるめられるロイドを見て一瞬だけ嫌な感じがした。


「悪いことだってのはわかってる。だけど・・どうしても信託があったことを伝えたい人がいるんだ」



「・・・・」


うーん・・伝えるくらいなら、いいのかなぁ?

不安な気持ちが心を占めていって堪らなくなってロイドの服についてる白いヒラヒラを握った。


「ん?エル怖いのか?」


「・・・」

「なになに・・三人で行こう・・?そうだな、ジーニアスだけだと心配だもんな!」

「エル・・ロイド・・ありがとう」


私だけじゃ心元ないけどロイドがいればきっと安心だろう、このとき私はそんな風に思っていた。



授業でいくら習ったっていっても実物を間近で見るのは初めての人間牧場、遠目からディザイアンが人をムチで叩いているのが見える。


「(・・ひどい)」

「中はこうなってたのか・・・」

「こっちだよ」


ジーニアスは行き慣れてるらしく、ジーニアスを先頭にディザイアンの死角になっている場所に案内された。



「マーブルさん!」


誰かを見つけて走っていくジーニアス、その視線の先には友達と言うには歳の離れた女性。

「ジーニアス!・・そちらはお友達?」

彼女の服は随分汚れていて手も豆だらけで悲惨な労働が目に浮かぶようだった。

「あぁ、ロイドだよ。こっちはエル」

「・・・」

「ご丁寧にどうも、よろしくね」

返事が出来ない代わりに頭を下げるとマーブルさんは優しく微笑んでくれた。


「マーブルさん、見た?信託があったんだよ!」

「ええ。救いの塔が見えたわ。これでようやく神子さまの再生の旅が始まるのね・・・今度こそ成功して欲しいわ」


「(・・・今度、こそ?)」


「前の神子は失敗したんだって?」

「えぇ、途中でディザイアンに殺されたと聞いてるわ」


・・・・、前の神子。


それじゃあコレットは何人目の神子だったんだろう。

そう思うと心がきゅっと痛んだ。



「マーテルさまに祈りましょう、神子さまを導いてくださるよう・・・」

マーテルさま・・教科書に何度も出ている名前だ。

マーブルさんの手のエクスフィアが私を見て光った気がした、そのときだった。


「・・・・」

「「「!」」」




―――――――・・   


 


淡い緑の・・・長い髪の優しい女性・・・


『・・・ねえさま!』






「・・・エル、おい!聞こえるか!」

「!?」

気付けばロイドが私の肩を揺すっていた。

・・今だれか声が聞こえた気がしたのに・・・・


「エル!大丈夫か!?」

「(大丈夫・・)」

「いま・・光が・・・」

光・・・?

「今エルから光が出たように見えたわ・・」


信じられない、という顔で三人が私を見た。




「(・・・・私今なにを・・)」



「そこのババァ!なにをしている!」



「・・いけない、ディザイアンが来るわ。三人ともお逃げなさい!」

「でも・・・」

「ロイド、どうしようもないじゃない・・早く逃げよう!」


「そうよ、早くお逃げなさい!」


もう足音がすぐそこまできてる!


「わっ!エル!!」


私は堪らずにロイドとジーニアスの手を掴んで走った。




  
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