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さっきの男の人はクラトスと名乗る傭兵だった。


信託を受けるにはダンジョン化している聖堂の中枢に向かわなければならないそうで、コレットの護衛について来てくれるらしい。


それはいいんだけれど・・・



「エル、だいじょぶ?」

「・・・・、」

コレットが心配して声をかけてくれた。

なんだろう、熱でもあるみたいに体が怠い。



「・・・・」

私を気遣ってか中々進めていないようにも思う。


これならファイドラさんと外で待ってたほうがよかったのかな。
でも大分中まで入っちゃったから今さら帰りづらいし・・




「あっ!ロイド、あれソーサラーリングじゃない?」

「おぉすげぇ!!」

悶々と悩んでいたら先行していたジーニアスとロイドが何か見つけたようだった。

私もコレットに手を引かれてロイド達の元へ向かう。





ソーサラーリング、と呼ばれた指輪はマーテル協会の聖具だそうだ。

「エルが持っててよ!ボク達だと戦闘で失くしちゃうかもしれないし」

「(うん)」

そう言ったジーニアスに頷いて返事をした。

大事なものだからしっかり持っておかなくちゃ、






そう思って渡された握り締めた時だった





キィイイン――――・・・・・







「・・・・・・っ!?」

「なんだ!?」

「「「!?」」」


ロイドの驚いた声が響く。
耳鳴りのような音と眩い光が握った手からあふれ出てきた。


手を開くとさっき渡されたソーサラーリングが無い。


「!!!」



何処に行ったんだろう大事な物なのに!


いつの間にか腰を抜かしていた私をコレットが立たせてくれた。

「びっくりしたぁ・・・エル、だいじょぶ?・・・えっと、『ソーサラーリングが消えちゃった』?」

「(こくこく)」

「「!!」」

慌ててコレットの手に文字を綴ると皆が驚いた顔をする。


一番落ち着いているクラトスさんが難しそうな顔で私を見た。



「・・・・・来る前からそのチョーカーは着けていたか?」

「?」

そんなもの着けたことない・・・・・


と思って首に手を持っていくと指が硬いものに触れた。




「エルちょっと首を見せてくれるか?」

「(ロイド?)」

言われるままに頭を上に向けるとロイドの表情が変わる。



「・・・・・これは・・・」




「え、ロイドなんなの?」

真剣なロイドにジーニアスが不安そうな声を上げた。



「信じられないけど、これ・・ソーサラーリングだ・・・」

「ウソ・・!?」

「間違いない、さっき見た石と装飾の飾りが彫ってある」



ジーニアスやコレットにも確認してもらうけど嘘を言ってるように見えない。

わたしからは見えないけどもドワーフに育てられたロイドが言うんだから間違いないんだろう。



「外せないの?ロイド・・・」

「うーん、引っ張ってもビクともしないなぁ・・・エル、痛かったりはしないか?」

「(ふるふる)」


首を振って意思表示をするとロイド達の表情はいくらか和らいだ。


「では、このまま行くしか在るまい」

「でも・・」

しばらく私達の様子を見ていたクラトスさんの冷静な声にジーニアスが不満を漏らした。



「・・・・これも神子の試練なのやも知れぬ」

「・・・・っ」


今度は大丈夫だと言わんばかりにクラトスさんが私の頭を撫でた。



「天使さまなら何か知ってるかもしれない、きっと大丈夫だよ!」

「そうだな!失くす心配も無くなったし!」

コレットとロイドが優しい言葉をかけてくれる、本当に良い子達だ。


それに比べて私は何もしてあげる事が出来ない・・・。



「エル、どうしたの?早く行こうよ!」



ジーニアスがぼーっとしていた私を呼んでいる。



彼等の背中を追う、体の怠さはいつの間にかなくなっていた。









・・・なんで頭撫でられたんだろ?







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